本書は、沖縄県内の湧き水や井戸の知られざる魅力や素晴らしさを教えてくれる。私たちが「命をつなぐ」ために必要不可欠な水は、時に「防災」のアイテムだったり「信仰」の対象だったり、嫌なことや生活排水を「流して」くれたり、とさまざまな役目を担っている。水道が未整備の頃、その役目は「湧き水」が担っていた。

「おきなわ湧き水紀行」ボーダーインク・1728円/ぐし・ともこ 那覇市出身、浦添市在住。1998年から10年間、ラジオ沖縄のパーソナリティーとして県内約400カ所のカー(湧き水)を訪ねて取材。2010年、湧き水の情報収集と発信を目的に「湧き水fun倶楽部」結成

 そんな湧き水を私が知ったのは「湧き水fun倶楽部」の活動に協力したからだ。著者はその倶楽部の代表で、現在も県内の湧き水を知ってもらう活動に取り組んでいる。その活動に携わる中で、私は自分の住む地域にも湧き水があることを知り、さらにその湧き水にまつわる歴史やエピソードなどにも興味を持つようになった。

 湧き水が地域の生活の中心地だったこと、そもそもそこは人間が発見した湧き水ではないという不思議な伝承に基づいた逸話があることなど、その面白さや楽しさに出会う中で、完全にこの世界にハマっていった。様々な逸話にはぜひ後世に残しておきたい話や心温まる話などがある、と著者は活動をまとめて書き残すことにした。

 多くの人は「湧き水」と聞くと「飲めるの?」と疑問に思うはず。水道法の関連で一概に答えられないが、本書ではそんな単純な視点で語ってはいない。あくまでも著者自身が訪ね歩き感じた雰囲気や、気づいたことなどを素直に表現し、語っているのである。それが本書の魅力だ。私も次回の散策ではそんな視点で湧き水を楽しんでみたいと思う。

 本書に取り上げられた湧水地は、本島内25カ所、離島5カ所で、著者が特にお気に入りの所を選んでいる。決して有名どころではない湧水地だったり、組踊「手水の縁」にちなんだ話や、首里城を起点にした話、行事にまつわる話があったりするなど、多彩なテーマに沿ってまとめられている。

 散策に役立つ地図も載っているので、すぐに使える本書をお供に、お気に入りの湧き水を探してみてはいかが? (野原梨奈・湧き水fun倶楽部メンバー)