65歳を過ぎても仕事をバリバリこなし、地域行事やボランティアに汗を流す人が増えている。気力も体力も十分なシニア世代を、高齢者として扱うことに戸惑いを感じる場面も少なくない。

 日本老年学会と日本老年医学会は、高齢者の定義を「75歳以上」に見直すよう求める提言を発表した。現行の65歳から10歳引き上げる。

 高齢者の健康に関する各種データが「10~20年前に比べ5~10歳若返っている」ことを示しており、現状に合わなくなっているとの理由からだ。

 内閣府が60歳以上を対象に実施した2014年の調査では、高齢者を「70歳以上」とした人が29%、「75歳以上」が28%と多く、「65歳以上」は6%だった。

 シニア世代の側も、高齢者と呼ばれることへの抵抗を少なからず感じている。

 学会の新たな区分では、65~74歳が「准高齢者」、75~89歳が「高齢者」、90歳以上が「超高齢者」。准高齢者については、仕事やボランティアなど社会参加しながら、病気の予防に取り組み、高齢期に備える時期と位置付ける。

 提言のポイントは、准高齢者を社会の「支え手」として捉え直しているところだ。 

 定義を見直せば、人口に占める高齢者の割合は現行の約27%から約13%に半減する。

 生涯現役でいられるに越したことはない。しかし少子高齢化の中で、働き手や社会保障の支え手を増やす議論に安易に結びつけることがないよう慎重な対応を求めたい。

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 「高齢者に対する意識を変え社会参加を促すきっかけに」というのが学会の考えだ。

 実際、定年後も働き続ける人は増えていて、男性の場合、65~69歳で2人に1人、70~74歳で3人に1人が仕事を持っている。

 培ってきた知識や経験が生かされるのは心強いが、ここに映し出されているのは、生活のために働かざるを得ない高齢者世帯の窮状でもある。

 OECDの13年時点の「高齢者の就業率の国際比較」によれば、フランス2・2%、ドイツ5・4%、イギリス9・5%に対し日本は20・1%。社会保障が整備されていない国ほど就業率が上昇する傾向にある。(藤田孝典著『続・下流老人』)  

 昨年、自民党の若手議員が「65歳からは高齢者」の定義を見直すなどとする提言をまとめた。このままでは財政を維持できないからだという。

 経済の視点から高齢者の社会参加が語られることには強い違和感を覚える。

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 高齢になればなるほど、健康状態や暮らし向きの個人差は大きい。

 元気な高齢者の力を引き出し社会で生かす仕組みを整えると同時に、苦しい状態に置かれている人への目配りも忘れない、細やかな政策が必要だ。

 1947~49年に生まれた「団塊の世代」が今年から70歳になる。高齢者1人を支える現役世代はかつての10人から2・1人に減っている。

 定義見直しは社会保障制度拡充の中で、車の両輪として進めるべきである。