「あいさつ禁止」のマンションが神戸市にあるらしい。住民総会で小学生の子を持つ親が提案した。「知らない人にあいさつされたら逃げるように教えているので」「教育上困ります」

 ▼年配の住民も「あいさつが返ってこないので気分が悪かった。お互いやめましょう」と応じ、本当に禁止が決まってしまった。地元の神戸新聞に「世の中変わったな、と理解に苦しんでいます」という同じマンションの住民の声が寄せられた

 ▼何重にも違和感が募った。子どもを守る親心は分かる。だが、知らない人全員から逃げ回って、とは教えられない。リスクを完全にゼロにはできない

 ▼あいさつを無視されたら面白くない。それも分かる。でも、あいさつくらいは見返りがなくたっていいのではないか。世の中にはいろんな人がいる

 ▼完璧なリスク排除や、完全に見合う対価を求める風潮が強まっているのを感じる。それを近所付き合いにまで持ち込み、突き詰めていくと「お互いやめましょう」という不幸な一致に達してしまうのだろう

 ▼自分があいさつしないと決めるならまだしも、他の人まで一律禁止するのは取引のルールのようなものだろうか。どうにも居心地が悪い。損得も勝敗もないおおらかな関係の中にこそ、人生に欠かせない喜びとゆとりがある。そう信じたいが、どうだろう。(阿部岳)