きょうは「成人の日」。式典はきのうの日曜日に合わせて開催した市町村が多い。ことしの新成人は1996年4月2日から97年4月1日までに生まれた人が対象だ。

 県内では1万7180人(男性8908人、女性8272人)、全国では123万人に上る。大人の仲間入りを心から祝福したい。

 96年の本紙の「県内十大ニュース」をめくると、「普天間飛行場の全面返還」「全国初の県民投票」「代理署名訴訟敗訴」…。上位3位を基地問題が占めている。新成人たちは基地問題で激しく揺れ動く中で生まれ、その後の20年間を過ごしてきたといっていいかもしれない。

 世界は先の見通せない混沌(こんとん)の時代に入っている。米国や欧州各国が内向き志向になり、分断と対立、不寛容と憎悪、排外主義が渦巻く。

 日本も無関係ではない。格差は是正されず、非正規雇用は約4割に上る。大学生の2人に1人が貸与型奨学金を受け、卒業と同時に借金を背負う。正社員になったとしても使い捨て同然に扱う「ブラック企業」がなくならない。

 生きづらい時代に、軽々しく若者に「希望を持って」と語り掛けるのは、厳しい現実とかけ離れてしまうだろう。

 だが、現実とは何だろうか。政治学者の丸山真男は「固定した、でき上がったもの」としてでなく、「可能性の束」とみる。どの方向を伸ばしていくのが正しいのか、どの方向はより望ましくないから伸びないようにチェックする。これをするのが政治的な選択であるという。

 58年の講演だが、本質はいささかも古くなっていないのではないだろうか。

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 県内では昨年、20歳前後の若者が政治参加する手段として、県議会に具体的に請願して注目された。「可能性の束」を推し進める動きだ。

 学生が起業した実現型ディスカッション企業「がちゆん」と沖縄タイムス社が主催した「夏の政治キャンプ」である。主権者教育から一歩進めて実際に請願に至るまでに若者たちが実感したのは、自分たちの生活は隅々まですべて政治や行政につながっていることだった。

 学生らは請願8件を提出。このうち6件が採択された。LGBT関連では「県庁への専門部署の新設」や、公共交通関連では「バス停や案内に対する利便性の充実」-などが全会一致で採択された。

 生活者目線で、自分たちが政治を動かす主体になれることを実感したに違いない。

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 選挙権年齢が昨年「18歳以上」に引き下げられ、新成人の中にはすでに投票を経験した人も多いだろう。だが、世代ごとの投票率は20代がいつも最低だ。

 政権選択選挙となる衆院選は、議員の任期が2年を切っており、解散・総選挙はいつあってもおかしくない。

 県内では1月の宮古島市長選を皮切りに、2月に浦添、4月にうるまの市長選のほか、首長選は6町村である。

 自分の住む地域の「可能性の束」を見極め、選択する当事者に躍り出ることを新成人に期待したい。