去る参議院議員選挙では、普天間基地の辺野古移設をなりふり構わず進める政権与党に対し、県民の厳しい審判が下った。しかし、国全体では与党が改選121議席中の70議席(58%)を制し、「与党圧勝」という表現があちこちで使われている。


 とはいえ、今回の選挙で与党に投票したのは、本土でも有権者の4人に1人に過ぎない。だが、棄権者が半数近くいたおかげで、実際の投票数に対する得票率(比例区+選挙区で計算)では与党が49%となり、さらに死票の生まれやすい1人区の多さから6割近くの議席を獲得できたのである。低投票率は少数者の支配を生むのだ。


 そんな中だが、新たに就任した沖縄・北方相は「(普天間などの米軍基地の跡地利用などが進まない場合)予算額を減らすのは当然。消化できないものを無理やりお口開けて食べてくださいよでは、全国民の血税で使われているお金を無駄遣いしているという批判に耐えられない」と述べたという。


 官房長官も「(跡地利用が遅れて)工事が進まなければ予算が少なくなるのは当然でないか」と語ったらしい。だが、それを言うなら県内移設の強行こそ、「受け入れられないものを無理やりお口開けて食べてくださいよ」である。跡地なら、県外のどこかへの移転でも同じように発生するではないか。


 それにしても彼らはなぜ、さらに反感を買いかねない発言をしたのだろう。県内与党からの公共投資関係者の離反を画策しているのか。仮にそうだとすれば、「県民を補助金漬けにしておけば、米軍基地の圧迫でも何でも甘受させることができる」という発想が露骨に過ぎる。


 故郷に帰れない避難者を大量に生んだ福島の原発被災地について「所詮(しょせん)は金目の問題でしょ」と言ってしまった担当大臣(当時)がいたことを思い出す。こうした下品な揺さぶりに対して、「そこまで尻尾を振らずとも沖縄経済は立ちゆく」と矜持(きょうじ)を保てるか。県民の品性と覚悟が問われるところだ。県経済の自立戦略については、この欄でも稿を改めて論じたい。


 いやもっと単純な話で、沖縄選出の前沖縄・北方相の落選に対する意趣返しなのか。そうであれば、対沖縄県民はもちろん、多くの他都道府県民からみても逆効果だろう。
 政権に反旗を翻して当選した小池都知事に対し、自民党都連執行部は面談を拒否、その結果湧き上がる不評に辞任を余儀なくされた。それをみた首相は、小池氏の就任あいさいつに際し否定的な発言を差し控えている。


 同じ首相は、沖縄に対しては同様の度量を示さないのだろうか。「都とはオリンピックで協調しなければならないので、ここはぐっとこらえる」というのであれば、沖縄県とも日米安保の維持のために協調しなければならないのではないか。


 以前にも書いたが、津波の危険がある辺野古海上に軍事施設を設けるのは愚かな選択だ。仮に海兵隊が県外に出ても、嘉手納などに米軍の一大拠点が残ったままであれば、沖縄の軍事的な「安全保障」体制に変化はない。不合理な計画を不道徳な手法で進める現政権に、沖縄が妥協すべき点は一向に見えない。(日本総研主席研究員、地域エコノミスト)

(2016年8月8日付沖縄タイムス総合面から転載)

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