トランプ次期米大統領がニューヨークで記者会見を開いた。ツイッターで一方的に情報発信する一方、大統領選後正式な会見を開いておらずメディアの批判を浴びていた。

 次期米大統領がこれだけ長期間会見を開かないのは極めて異例で、会場のトランプタワーは200人超の記者やカメラマンで埋め尽くされた。しかし記者が質問する度にいら立ちを見せ、答えをはぐらかすトランプ氏の態度からは、間もなく大統領に就任する自覚は感じられなかった。

 トランプ氏はトヨタ自動車や米自動車大手フォード・モーターなどによるメキシコへの工場建設計画をツイッターで相次ぎ批判した。会見では、その結果、トヨタが米国での1兆円規模の投資計画を発表し、フォードが計画を見直したことを指して「いくつかの素晴らしいニュースがあった」と自賛。「私は最大の雇用創出者となる」と強調した。

 だがこれは企業活動に対する「脅し」であり、あからさまな政治介入だ。政策を立て、企業の自主的な判断を促す本来の手法とは異なる。脅しは一時的に功を奏したとしても、中・長期的には企業の離反や経済の混乱を招き逆効果になる恐れが強い。

 ツイッターなどで「オバマ政権の陰謀」と否定していた、大統領選を狙ったサイバー攻撃へのロシア関与については一転、認めた。次期大統領のトランプ氏に情報が無かったとは考えにくい。なぜ否定したのか。

 民主主義の国で、国民と政治家をつなぐのは言葉=公約だ。そこにうそがあれば、大統領として広い支持を得て任務を遂行することは難しい。

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 トランプ氏の発言は一貫性がない。政策へ深化しているとはいえず、実現の道筋が見えない。

 医療保険制度改革(オバマケア)については「大失敗」と撤廃を強調。同改革はオバマ政権の目玉政策ともいわれたが、導入までには議会の反発など困難を極めた。対してトランプ氏は「もっといいものをつくる」としたが具体策への言及は無かった。

 選挙中に「費用は全部メキシコ持ち」などと強調した国境に壁を建設する計画については、選挙後「メキシコ政府が全部費用を払うわけでもない」とトーンダウン。しかし今回再び「1年も1年半も待っていられない」と強い意欲を見せた。

 不動産など自身のビジネスと大統領職との「利益相反」については、会見中多くの時間を裂き担当弁護士に説明させた。

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 事業を息子たちに譲るための書類を高々と積み上げ「潔白」をアピールしたが、政権の重要なポジションに親族や経営者仲間を採用する人事を次々発表しており、疑いは晴れない。これこそ自らの言葉で明確に語るべきだった。

 TPP、過激派組織「イスラム国」対応など外交や安全保障政策でも現政権との違いをアピールしたが、会見中、目の前の記者に敵意をむき出しにするようでは、国際秩序の混迷が深まる懸念がぬぐえない。米新政権の危うい船出をうかがわせた。