トランプ次期米大統領が国防長官に指名したマティス元中央軍司令官は、上院軍事委員会の公聴会で、米軍が直面する脅威について、中東のテロ組織だけでなく、ロシア、中国を名指しした。

 同盟国に対しては、応分の負担を求める考えを示唆した。安倍政権がこれまでの安全保障政策を貫こうとすれば、「三つのジレンマ(板挟み)」がいっそう深まっていくことが予想される。

 同盟強化のために米国の要求を積極的に受け入れトランプ氏の気を引くか、それともこれを機会に軌道修正を図り、東アジアの緊張緩和に向け存在感を発揮していくか。日本の外交・安全保障政策は大きな岐路に立たされている。

 安保政策をめぐる「三つのジレンマ」とは(1)同盟のジレンマ(2)安全保障のジレンマ(3)従属のジレンマ-のことを指す。

 日米同盟の下で日本は、米国の戦争に「巻き込まれる恐れ」と、米国から「捨てられる恐れ」を抱え、その間を揺れ続けてきた。それが「同盟のジレンマ」と呼ばれる現象である。

 中東での対テロ戦争を重視するトランプ氏が日本の支援を求めることになれば、「巻き込まれる恐れ」が一気に高まる。

 安倍政権が懸念するのは「捨てられる恐れ」である。

 安倍晋三首相は2015年4月、米上下両院の合同会議で米国のアジア回帰政策を「徹頭徹尾支持します」と最大級の表現を使った。「捨てられる恐れ」の表れに他ならない。

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 安倍首相が集団的自衛権の行使容認や名護市辺野古の新基地建設に執心し、米国にこびを売るような発言を繰り返すのは、同盟を強化し、米軍を引き止め、対中けん制を図る狙いがあるからだ。安倍首相の執念にも似た対中けん制政策の結果、何が生じているか。「安全保障のジレンマ」が深まっているのである。

 日中関係は、経済の相互依存が深まっているにもかかわらず、政府間も国民同士も、信頼を欠いた状態に陥っている。批判の応酬が止まらない。防衛力強化の名の下に軍事抑止力を強化するだけの政策は相手国の疑心暗鬼を生み、双方の軍備増強を招きかねない。それが「安全保障のジレンマ」である。

 そして、三つ目は敗戦国日本が安全保障と引き替えに受け入れさせられてきた「従属のジレンマ」である。日米地位協定の下で日本がどのような状況に置かれているか、その歴史と現在をどの程度の日本人が知っているか…。

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 沖縄に地上兵力である海兵隊を押しつけ、米軍演習場を集中させることで、「基地問題」を本土から見えなくし、同盟のプラス面だけを強調する。

 そのような「構造的差別」ともいえる基地政策によって実は今、四つ目のジレンマが拡大しつつある。基地受け入れをめぐる本土と沖縄の分断・対立の深まりだ。

 20日に召集される通常国会では、この「四つのジレンマ」について、深い議論を展開してもらいたい。