2015年の教員採用試験で、安慶田光男副知事が県教育委員会に特定の受験者を合格させるよう働き掛けていた疑惑が浮上している。

 安慶田氏は「そんな話はない。断じてない。僕の揚げ足を取って、蹴落とそうという人の謀略だろう」と全面的に否定している。

 複数の県教委関係者による証言は具体的である。

 疑惑が浮上している以上、安慶田氏は正式に記者会見を開き、身の潔白を証明するとともに、県民に説明責任を果たす義務がある。

 県教委関係者らによると、安慶田氏から働き掛けがあったのは15年7月の1次試験の後。職員が副知事室に呼び出され、受験者の氏名や受験番号が書かれたメモを渡された。県教委に直接、電話もかかってきたと証言する。

 安慶田氏が「よろしく」などと言って依頼したのは、1次の筆記試験をパスした2~4人の受験生。模擬授業や個人面接、適性検査などの2~3次試験を控えていた。

 県教委は「副知事の地位を利用した事実上の指示」「不正行為に当たる」と判断し、合否判定で安慶田氏の意向に従うことはしなかった。その結果を県教委側が安慶田氏に報告すると、幹部が副知事室に呼び出されたという。

 地方公務員法や県職員倫理規程にも特別職の口利きなどを防止するルールが整備されていない。だが、証言が事実だとすれば、副知事の影響力を背景にした不当な圧力というほかない。

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 15年4月に施行された改正地方教育行政法によって教育委員会制度が見直され、首長の権限が強まった。

 ただ政治的中立性を保つために採用・異動・昇任などの教職員人事は教委の専権事項である。

 安慶田氏を巡っては、16年度の県教委の幹部人事で特定の人物を課長級以上の重要ポストに就けるよう指示するなどの疑惑も新たに出ている。

 平敷昭人県教育長は口利き疑惑について「自分の就任前の話であり、報告も受けていない」と言っているが、県教委は働き掛けを受けた当事者であることを忘れてはならない。この種の情報が報告されるとは考えにくく、自分の就任前だからというのもおかしい。新たな人事介入疑惑と合わせ、事実関係の解明に乗り出すべきである。当時の関係者を含め早急に事情聴取を進めてもらいたい。第三者を取り込んだ調査が必要だ。

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 全国では議員らの口利きを記録する制度が広がりをみせている。記録を積極的に公開し、市民がチェックすることによって行政の透明化を進めようとするのが狙いだ。

 ホームページを毎月更新し、議員の名前や内容、対応まですべて掲載している自治体では「不当な口利き」が激減した。一方で「不当な口利き」に限って記録すると定めたため職員が該当するかどうか判断できず、記録がゼロの自治体も少なくない。

 県には口利きを記録する制度がない。口利きをすべて記録し、公表することが重要だ。県にはそんな制度の導入を急いでもらいたい。