詩人の吉野弘さんに「医」という詩がある。〈「医」の中に「矢」があります/病む者へ、まずは矢のように駆けつける心情…〉。医療に携わる人は誰よりも敏感に患者の声に反応しなければならない

▼〈そして、矢が的の中心を射当てるように/“ズバリ的中”の診断をするのが身上…〉。詩はこう続き、的確な診断、最善の治療に、その真価を認める

▼私事で恐縮だが、家族が県外で入院しており時折、東京から見舞いに行っている。診断、リハビリと、沖縄にいたときとの違いを感じることが多い

▼「重病の疑いを感じると県外で診断を受ける」「沖縄の病院の診断とは全然違って驚いた」などの話を聞くことはよくある。県内の病院、医療の質が劣っているとか言いたいのではない。「矢」が入っている医の心を持つ医療関係者も多いことは承知している

▼が、こんな話が多く出てくる現状は厳しく、悩ましい問題である。地域の医療の信頼が薄れれば結局、お金がある人しか、いい医療が受けられない。そんなこと想像もしたくない

▼医療側の「ズバリ的中」に向けた努力は当然、患者側も病気や健康について学び、医療側と根気強くコミュニケーションすることが大事である。意思疎通の「矢」を一方通行にしないこと、島国の沖縄ではその努力が何より大事であろう。(宮城栄作)