「気がついたら下着が汚れていた」「便意を感じてからトイレまで間に合わなかった」…などの症状で悩んでおられませんか? このような状態を「便失禁」といいます。便失禁とは、おしりの筋肉や神経が働かず、そのために排便をコントロールできなくなる病気のことです。原因として、加齢、自然分娩(ぶんべん)による肛門の損傷、直腸の手術の影響、肛門の病気や手術の影響、神経系の損傷などがあります。

 人によっては明らかな原因がなくても失禁になる方もおられます。あまり聞かない話で、珍しいように感じる方も多いかもしれません。しかし、調べてみると日本ではおよそ500万人もの人々がこのような症状に苦しんでいるといわれています。

 しかも、高齢者や介護を必要とされている方だけではなく、仕事や家事、育児などの日常生活を送っている方にもみられます。

 便失禁はただ単に“便が漏れる”ということだけが問題ではありません。日常生活が制限される、家から外に出るのをやめ社会活動へ参加しなくなるなど、“生活の質”が低下することが一番の問題点です。誰にも相談できずにひとりで悩んでいる方が多いです。

 しかし、便失禁は適切な治療で改善できる病気です。

 では病院での診察はどのような流れになるのでしょう。まずは何より大切なのが問診です。問診で普段の排便や失禁の状況、現状に至るまでの経緯を詳細に伺います。次に直腸と肛門の診察を行います。その他に直腸肛門の働きを調べる検査をいくつか行います。

 具体的には直腸の感覚を調べる検査や、肛門の周りにある筋肉の締まり(圧力)を測定する検査、超音波で筋肉が損傷していないかを確認する検査を行います。これらを行ったのちに診断と治療の方針を決めていきます。

 治療は可能な限り身体への負担の少ないものから開始します。まずはお薬で排便のコントロールをします。他に直腸や肛門の動きのリハビリテーションを行うこともあります。肛門の周りにある筋肉が損傷している方はこれを修復する手術を行います。

 これらの治療を行っても便失禁が改善しないこともあります。このような方には、肛門を締める神経を電気で刺激することにより、便が漏れるのを防ぐという新しい治療法「仙骨神経刺激療法」が勧められます。

 便失禁は改善できる病気です。おしりのこと、排便に関することで病院へ行くのは勇気がいることではありますが、ひとりで悩まずに肛門科へ相談しましょう。(仕垣幸太郎 おもと会大浜第一病院)