【記者の視点】

 県政を守るために、何もなかったことにしたい-。安慶田光男副知事の疑惑が浮上して以来、知事周辺や県教育委員会内部では、そんな空気が支配的だった。しかし教員採用試験には、受験者一人一人が人生を懸けて臨んでいる。政治的な事情で、曖昧な幕引きをすることは許されない。

 23日の記者会見で、翁長雄志知事は「本人は事実でないと言っている」と述べ、安慶田氏を気遣った。これだけ重大な疑惑になりながら、本人の言い分を重視するかのような姿勢は、リーダーとしての資質に疑問を持たれかねない。

 県教委の内部調査も拙速だった。誰が証言したか、すぐに特定されるようなやり方では、「告発者探し」と疑われよう。

 調査打ち切りで幕引きが図られるかのように見えた状況を一変させたのは、「口利きはあった」とする元幹部の告発文である。

 一つ間違えれば「裏切り行為」とも取られかねない行為に踏み切ったのは、教育行政を率いる立場だった者としての責任感からだったに違いない。

 県政は今、米軍基地問題や予算編成で重要な局面にある。

 県政を不安定にさせてはならないという「組織の論理」と、教育者や職員としての「信念」の間で、葛藤し、傷付き、あるいは口を閉ざす関係者を、この間の取材で多数目の当たりにしてきた。その中で出てきた勇気ある証言を、県政と県教委は真摯(しんし)に受け止める責任がある。

 この問題の出発点は、教育行政、とりわけ公平性が欠かせない採用試験が、「介入」によってゆがめられかねないという教育関係者の強い危機感だ。

 県政を守るという「大義」とは切り離し、真相究明と再発防止策の検討を進める必要がある。(社会部・鈴木実)

沖縄県教委への「働き掛け」疑惑 これまでの経緯