「蜂の一刺し」。ミツバチは一度刺してしまうと死んでしまうことから、命がけで相手に致命傷となる一撃を与える行為を言う

▼1981年のロッキード事件裁判で、被告の田中角栄元首相の秘書の妻が、5億円の賄賂を田中氏が受領したことを裏付ける法廷証言をし、その後の会見で口にして流行語にもなった言葉である

▼この方の証言もいわば「蜂の一刺し」だろう。安慶田光男前副知事の教員採用試験介入問題をめぐり、諸見里明前教育長が、一連の疑惑は事実との証言を記した文書を県教育委員会に提出した

▼実名の文書には、副知事による介入や恫喝(どうかつ)した生々しい模様が記されている。教育行政の中立性を死守するためだったとはいえ、絶大な権力を持つ相手の「不正」を実名で告発することは、刺し違える覚悟がいるはずである

▼当事者の安慶田氏は疑惑を否定したまま突然辞任した。任命責任を負う翁長雄志知事は「安慶田氏に確認したい」と言うが、歯切れの悪い言動は盟友をかばっているようにも映る

▼県政を混乱させた責任を取って早々と退場した安慶田氏は、前教育長の「蜂の一刺し」をどう受け止めているのだろう。疑惑の真偽をうやむやにしたまま逃げ続ければ、傷ついた翁長県政は県民の信頼をさらに失い、回復不能な致命傷を負うことになる。(稲嶺幸弘)