主要企業の労使が意見を交わす「労使フォーラム」を皮切りに、2017年春闘が事実上スタートした。

 経団連は賞与や定期昇給を含む年収ベースでの賃上げを主張している。

 連合は「2%程度を基準」とするベースアップ(ベア)を求めている。

 デフレ脱却に向けた賃上げの必要性では一致するが、給与を底上げするベアを巡る姿勢には隔たりがある。

 安倍政権の意向を反映した「官製春闘」は4年目となる。過去3年はベアと定期昇給を合わせた賃上げ率が2%に達し政府は成果を強調した。しかし底上げにつながるベアはごくわずか。

 今春闘の焦点はそのベアの着実な実現である。

 電通の女性新入社員の過労自殺を受けて、長時間労働の是正も重要テーマに浮上している。

 新入社員に労使協定(三六協定)を超える違法残業をさせたとして労働基準法違反の疑いで、電通と当時の上司が書類送検されたのは昨年12月のこと。今年に入り三菱電機も違法残業の疑いで書類送検された。

 経団連は春闘の方針となる経労委報告で「経営トップがリーダーシップを発揮して長時間労働の撲滅と、職場環境の整備に強力に取り組むこと」を訴える。

 連合も春闘要求に過重労働対策やワークライフバランスの実現を盛り込む。

 長時間労働を是とする日本企業の「文化」に切り込み、労働時間の見直しを具体的に進める春闘とすべきだ。

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 長時間労働が疑われる約1万事業所を対象にした厚生労働省の調査で、4割を超える約4400カ所で違法な長時間労働が見つかった。そのうち残業時間が月100時間を超えたところが2400カ所余りもあった。

 なぜ長時間労働はなくならないのか。

 「人手が足りない」「業務量が多い」「競争に勝ち抜くため」など、さまざまな理由が挙げられる。

 一方、残業手当が生活費の一部になっているという労働者側の事情もある。長く働くことを評価する日本特有の価値観も見逃せない。

 だが違法残業の摘発が相次ぎ、ブラック企業が社会問題化する中、生活や健康を犠牲にして働く「モーレツ社員」は、今や企業のイメージダウンにつながりかねない。

 違法残業を許さない社風の構築が必要である。

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 日本の時間当たり労働生産性は経済協力開発機構(OECD)に加盟する35カ国中20位と低く、その水準は米国の3分の2程度だ。

 労働生産性の低さを長時間労働で補ってきたという見方もあるが、労働時間を減らしながら、生産性を高めていくことが目指す「働き方改革」である。

 生産性の向上には、IT(情報技術)活用による業務の効率化、AI(人工知能)など技術革新への投資が欠かせない。

 人への投資である教育訓練の充実も優先的に取り組む課題だ。