谷川俊太郎さんの詩「うそとほんと」にある。〈うそとほんとはよく似てる…うそとほんとは 双生児〉〈うそとほんとはよくまざる…うそとほんとは 化合物〉と続く

▼優しく書かれているが、内容は結構怖い。現実社会や世界を見渡せば、事実や真実よりも、感情的な言葉やうそがあふれ、人心が導かれていく現象が相次ぐ。この状況は「ポスト真実(トゥルース)」といわれ、世に流布している

▼昨年の英国のEU離脱をめぐる国民投票前に、虚偽情報が意図的に流され、離脱派の勝利につながった。米大統領選でも、相手候補のデマや偽ニュースが流され、うそに近いことを最も多く話してきたトランプ氏が当選した

▼うそとほんとの化合物は、沖縄に向けても粗製され続けてきた。最近では、ろくに取材もせずに基地建設に抗議する人たちを意図的におとしめたテレビがあった。テレビ局や制作会社は、謝罪も訂正もしない

▼ポスト真実の状況は今に始まったことではないことに気づく。人は大きなうそにだまされやすい、と述べたヒトラーも、当時のポスト真実的な風潮を利用してのしあがった

▼谷川さんの詩は続く。〈ほんとの中にうそを探せ〉〈うその中にほんとを探せ〉。むき出しのうそ、過激な主張が幅をきかすが、何がほんとかをめぐる闘いから降りてはいけない。(宮城栄作)