本書は、北原みのりと佐藤優の対談集だ。そもそもこの組み合わせが面白い。両者を知っている者は意外な組み合わせだと感じるだろう。北原は、セックスグッズショップの経営者であり、フェミニストの作家である。ルーツを沖縄に持つ佐藤は、元外務省主任分析官で現在は作家として活躍しており、在沖米軍基地問題にも積極的に発言している。フェミニズムに関心がある人は北原を、在沖米軍基地問題に関心がある人は佐藤を知っているだろう。

河出書房新社・886円/きたはら・みのり 1970年神奈川県生まれ。作家。「毒婦。」「さよなら韓流」など著書多数▽さとう・まさる 1960年東京都生まれ。作家・元外務省主任分析官。「国家の罠」「自壊する帝国」など著書、受賞多数

 なぜこの二人が対談することになったのか。佐藤は「今回のこの対談は、ジェンダーについて、フェミニズムについて北原さんに教えてもらいたいとお願いして始まったものです」と述べている。二人の共通点は、逮捕されたことがあるという経験である。国家の暴力性を皮膚感覚で知っている二人が国家と性の関係について様々(さまざま)な切り口から議論を重ねていく。

 本書は、「この国の性癖」「戦争と性」「性の売買を強いる国、ニッポン」と3章構成となっており、テーマはAKB、「慰安婦」問題、沖縄と多岐にわたる。問題を考える切り口も、キリスト教やフェミニズムなど互いのバックグラウンドを駆使し、読み応えがある。

 この対談の美味(おい)しい点は、佐藤と北原が漫画、小説、学術書など話題と関連する様々な書籍を紹介し合っている点である。関連書籍の内容と北原や佐藤の解釈がコンパクトに紹介され、次々に読みたい本が増えていく。

 「国家」、そして「性」、どちらもピンとこない、自分とは関係がないテーマだと感じている人にこそ読んでもらいたい1冊だ。北原は佐藤に対し、性差別の問題を自分のこととして考えるよう繰り返し問う。例えば、「慰安婦」問題を考える際に、佐藤が自分の母や娘が売春を強いられたらと想像しようとするのに対して、北原は男性も自分が売春を強いられる想像をしてはどうか、と提案する。佐藤は対談を通じて「自分自身の思考がいかに暴力性を帯びているか」について気づかされたと言う。ぜひ読者もこの気づきを追体験してもらいたい。(玉城福子 沖縄大・沖縄国際大非常勤講師)

(写図説明)河出書房新社・886円/きたはら・みのり 1970年神奈川県生まれ。作家。「毒婦。」「さよなら韓流」など著書多数▽さとう・まさる 1960年東京都生まれ。作家・元外務省主任分析官。「国家の罠」「自壊する帝国」など著書、受賞多数