2017年(平成29年) 11月22日

大弦小弦

[大弦小弦]問題を見逃せばあすも仲良く付き合える。書けば嫌われる…

 問題を見逃せばあすも仲良く付き合える。書けば嫌われる。記者も人間、よく悩む。徳島新聞の土井良典さん(34)の答えはシンプルだ。「記者は嫌われてなんぼです」

▼ITのまちづくりで脚光を浴びる神山町の担当。町長と議員が公費で上京する日程に浅草観光があると報じた。怒った町長は役場、学校にまで取材拒否を指示した。土井さんはそれも報じ、撤回に追い込んだ

▼役場によく通う記者は地元紙の土井さんの他にいない。だからこそ「うちが最後のとりで。見逃せばそのままだ」と踏ん張った。一連の報道は新聞労連の疋田桂一郎賞を受賞した

▼日米両政府を批判するのは派手に映るかもしれない。実は、日ごろ顔を合わせる身近な権力を批判する方が難しく、真価を問われる。最近の沖縄では、副知事「口利き」の報道がある

▼土井さんは、あれだけ批判した町長に「記者魂を発揮したな」と声を掛けられたという。誠実な取材姿勢は伝わっていた。最高の褒め言葉だったはずだ

▼本紙の高江報道も、土井さんと同時に新聞労連の賞を受けた。それを知った建設会社の知人から電話があった。「人を食い物にして賞をもらって、上等だねぇ」。確かに強く批判した。口ごもっていると、「おめでとさん」と祝福され電話は切れた。どきどきするが、これだから記者はやめられない。(阿部岳)

ルポ 沖縄 国家の暴力 現場記者が見た「高江165日」の真実
阿部 岳
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