【連載「働く」を考える】

 「沖縄での補助金が切れたから、会社はいつかここを撤退して、九州に移るつもりなのかもしれないという不安もあって」

手取り約15万7千円の吉田さんの給与明細。日常的に残業があったが、残業代は4.25時間分しか支払われていない

 県内のコールセンターに昨年春まで正社員として約3年間勤務した吉田和貴さん(41)は、退職の理由をこう説明した。24時間365日体制のコールセンターで、全国の客から機械製品の修理や使用方法の問い合わせに応じる業務についていた。県を通して社が受託した国の緊急雇用創出事業(助成金・1400万円超)の枠で十数人のうちの1人として採用された。

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 3日間の休日を挟み、3日間連続で12時間の昼勤(午前10時~午後10時)と深夜勤(午後10時~午前10時)を繰り返す勤務サイクル。基本給16万円から社会保険料などを引き、残業代を含めた支給額は15万~18万円だった。

 故障の対応マニュアルはなく、メーカーに問い合わせてトラブルの原因を探った。客は早急な対応を求めてくるが、内容は複雑で回答には時間がかかる。だが、社長は「なんで1日10件しかこなせないの」と社員をとがめた。

 業務負担が増したのは、人手が極端に不足していたからだ。当初15人いたオペレーターは次々と辞め、7人に減った。就業時間が過ぎても夜勤の同僚を気遣い、引き継ぎの業務を終わらせるまで帰れないことも多い。サービス残業も休日出勤も日常的だったが、残業代がつくのはほんの一部だった。

 「忙しくてミスが増え、回答期限が守れなくなった」。ミスが続いたことを理由に、吉田さんは5千円の減給処分を受けたことがある。何度も社長や上司に人を増やしてほしいと要望したが、応じることはなかった。

 退職の数カ月前、九州内に自社で運営する別のコールセンターが立ち上がった。沖縄と同じように自治体から補助金を受け、業務内容も沖縄とほぼ同じだった。人手不足の沖縄センターはそのままに、社は新センターの技術者育成に力を入れ始めた。

 「県から受けた補助金の期限が切れたらしいよ」。新センターの立ち上げと同じころ、吉田さんは社内でそんなうわさを耳にした。時期を同じくして、頼りにしていた先輩が退職。「先も見通せないし、残っていても仕方ないかな」。先輩の後に続く決心がついた。

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 吉田さんは県外出身で海外で生まれ育ち、英語以外に複数の言語が使える。だが、コールセンターでは「語学ができる人は優遇する」という採用時の約束は守られなかった。移住先に選んだ沖縄の労働環境は「想像以上に厳しい」のが率直な感想だ。現在は全く異なる業種で語学の強みを生かせる仕事を得た。「今度は少しでもいい環境で働けたら」。新しい職場に望みを託している。(文中仮名)(学芸部・座安あきの)

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