疲れやすい、身体がだるい、めまい、頭痛、冷え性、気分が落ち込むなどの症状で病院受診し、検査を受けたけれど「異常なし」と診断された場合、もしかすると「かくれ鉄不足(潜在性鉄欠乏)」なのかもしれません。

 「鉄不足」というと一般的に貧血をイメージしますが、実は貧血が現れるずっと前から体の中の鉄は少しずつ目減りしています。鉄はタンパク質とともに赤血球の中のヘモグロビンをつくり全身に酸素を運搬する働きをしています。もし、材料である鉄が不足すると酸素が運べなくなりさまざまなトラブルが生じてしまいます。そのため、私たちは身体の中に貯蔵鉄の形で鉄を蓄えています。ヘモグロビンの材料の鉄がなくなると、まずは蓄えてあった貯蔵鉄を使います。貯蔵鉄が減り、それがなくなると次いで血液中の血清鉄が減り、最後にヘモグロビンが減ります。つまり、血液検査で貧血と診断されるほどにヘモグロビン値が低下しているときは、すでに重症の鉄欠乏になっているということです。この段階でいわゆる貧血の症状は当然出現していますが、実は、貯蔵鉄が減少している時点(=かくれ鉄不足)で貧血と同じ症状が出現します。

 このような「かくれ鉄不足」を見つけるためには、血清フェリチン値を測定することが有効です。血清フェリチンは貯蔵鉄の量を反映しています。ただし、貯蔵鉄量とは無関係にフェリチン値が上昇する疾患もあるため、その他の検査項目を含め総合的に判断する必要があります。

 鉄は食事で1日に平均10~15ミリグラム摂取していますが、そのうち体内に吸収できるのは約10%の1ミリグラムです。一方、腸粘膜の脱落、皮膚や汗、髪の毛、爪などから約1ミリグラム失います。生理のある女性はこれに加えて、月経血で毎月約30ミリグラム、1日平均では約1ミリグラムの鉄を失います。つまり、健康な男性では毎日3食普通に食事を摂っていれば吸収と排泄のバランスがとれますが、有経女性は月経血で喪失する分より多くの鉄を補充しなければならないということです。

 もし、補充が足りなければ知らぬ間に貯蔵鉄が使われ、かくれ鉄不足が進行しさまざまな症状を引き起こします。特に、思春期や妊娠・授乳中は、需要が亢進(こうしん)し喪失量は増加するため注意が必要です。また、スポーツ時の消耗や発汗による喪失量もあなどれません。

 かくれ鉄不足は、血清フェリチン値を測定してみないと診断できません。思い当たる症状がある方は、一度血清フェリチン値を含む総合的な血液検査を受けることをお勧めします。(金城未来子 ちばなクリニック)