故ダニエル・イノウエ上院議員の生前、議員会館にあった同氏のオフィスに米太平洋軍の幹部らがよく足を運ぶことに気づいた。

 イノウエ氏はハワイ州出身だから太平洋軍に門戸を開いているのだろうと思っていたのだが、ドアを開けて通じる道はイノウエ氏のオフィスだけではなかった。

 米軍が予算を獲得するには、本来ならば連邦議会における煩雑な手順を踏む必要がある。しかし、議会の財布のひもを握る存在といわれたイノウエ氏とのダイレクトなパイプをフルに活用することで、太平洋軍は他軍よりも優遇される状況を作り出していった。

 トランプ米大統領の就任式が執り行われる2日前、首都ワシントン市内である晩さん会が開かれた。主催者のペンス副大統領は、トランプ政権で実権を握るだろうといわれている人物で、海兵隊員の息子を持つ。ワシントンではペンス氏と海兵隊の距離が近いのは知られた話だが、海兵隊出身のマティス国防長官を筆頭に、同隊幹部らの姿が多いのをみて、私は前述したイノウエ氏と太平洋軍の関わりをゆっくり思い出していた。

 トランプ氏が就任以降、乱発する大統領令をみると、環境破壊、移民排除、米軍再建といった主要な柱が見えてくる。

 「力による和平」を追求したいトランプ氏は、強い米軍を再建するため、30日以内に現状を検証し、60日以内に新たな再建計画を提出するようマティス新国防長官に命じた。

 米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設計画は、翁長雄志知事による埋め立て承認取り消し処分の取り消しで工事が再開された。米側は裁判という大きな「支障」が取り払われた今、計画そのものを青信号とみなしているようだ。

 新基地建設を阻止するには、30日以内にマティス氏に心変わりさせる「何か大きな変化」が必要だ。めまぐるしく変化する米側の状況を考慮せず、沖縄の事情だけで物事を進めようとすれば、船に乗り遅れることになる。

 知事はこれまで沖縄の民意を強く訴えてきた。しかしトランプ氏は民意を無視し、自国民をも差別する大統領だ。遠い沖縄の民意や差別的状況を訴えても聞く耳すら持たないだろう。

 米国内で日々、トランプ新政権に対する衝撃や不安や動揺が広がるなか、翁長知事の3度目の訪米要請行動が始まる。(平安名純代・米国特約記者)