「障がいのない人はスポーツをしたほうがよいが、障がいがある人はスポーツをしなければならない」。スイスの車いす陸上競技選手のハインツフライ選手の言葉です。彼は、脊髄損傷のため両足のまひがある方ですが、パラリンピックで夏季と冬季合わせて14個の金メダルを獲得、車いす競技においては、1万メートル、ハーフマラソン、フルマラソンの世界記録保持者でもあります。

 私は障がいをもっていないから興味ないなと思っている方もいるかもしれません。ただしそれは違います。そう思っている方のほとんどは障がい者予備軍だからです。交通事故に遭い、今後病気を患って寝たきりになるかもしれません。高齢になればサルコペニア(筋減少症)により、歩行障がいを患ってしまうかもしれません。ですのでより多くの人に興味を持ってほしい言葉です。

 障がい者予備軍のわれわれは来るかもしれない障がいにどのように臨むべきでしょうか。やはり彼が言うように「スポーツをしたほうがいい」のです。スポーツの利点はご存じの通り、生活習慣病の治療・予防、認知症発症・悪化の予防、記憶力の改善、メタボリック症候群、ロコモティブシンドロームの予防、健康寿命の延伸、骨粗しょう症の予防、関節痛の緩和などさまざまな利点があります。薬よりもただでより効果のあるスポーツをしない手はありません。

 では、すでに障がいのある人はどうすればいいのでしょうか。答えは「スポーツをしなければいけません」。どうして障がいのある人はスポーツをしなければいけないのか。むしろ障がいがあるので危険を伴うスポーツはしないほうがいいのではないか、合併症を起こさないように激しい運動は避けたほうがいいのではないか、と思うかもしれません。

 ではスポーツをしない場合で考えてみましょう。スポーツをしなければ、体重が増え、筋力が衰えますが、健常者は忙しく働いたり、家事をしたりすることで、スポーツに相当する活動を行うことができます。

 障がいのある人は体重が増え、筋力が衰え、生活習慣病に陥ってしまうことは、健常者と同じですが、増悪のスピードが違います。健常者と違って活動範囲が狭く、消費するカロリーを上げられないからです。また体重増加、筋力低下はさらに活動範囲を狭めてしまい、悪循環に陥ります。障がいのある人は努力してでもスポーツを行うことの方が、健常者以上にメリットがあり、健康寿命を延ばすことに直結します。厳しいと思われるかもしれませんが、障がいのある人の方ほど「スポーツをしなければならない」のです。(岸本幸明 岸本外科リハビリクリニック)