その昔、一歩も進めない暗闇の中で絶望のあまり立ちすくんだ時がある。そんな時、私を救ったのは少しの状況も解さず、ただただ無邪気に笑い転げる幼い双子の娘たちだった。

「こころに剣士を」の一場面

 舞台は1950年代のエストニア。ソ連の秘密警察から身を隠す田舎町で、子供たちにフェンシングの指導を始めた男がいた。

 目立たず騒がず静かに暮らす男だが、子供たちが出たいとせがむ大会に危険を承知で挑む決意をする。

 人は自己のためだけではなかなか動けない。未来を見つめる子供たちのまなざしの向こうが、少しでも希望に満ちたものになるようにとの思いが、男の行動を決めていく。

 彼が子供たちに伝えたかったのは勝利する喜びだけではなく、自らの人生を切り開いていく剣のありようだった。(スターシアターズ・榮慶子)

シネマパレットであすから上映予定