「モダンな白亜のドーム」「スフィンクスの秘密」「建物は電器屋として再利用」-。個性的なたたずまいが伝わってこないだろうか。

「沖縄まぼろし映画館」(ボーダーインク・1944円)

 戦後沖縄における映画館史はきわめてユニークだ。終戦直後から、米軍による慰撫(いぶ)活動の一環として役者らが集められ、各地を巡回して芝居の公演が行われるようになる。わずかな物資でつくられた簡素な舞台にもかかわらず、娯楽に飢えた住民らで沸きに沸いたそうだ。

 公演をきっかけとして各地に劇場が誕生し、映画館の礎が築かれていくのだが、並行するように民間からも映画興行の息吹が起こる。立役者となったのが、宮城嗣吉、高良一、国場幸太郎、宜保俊夫ら、異能の映画人たちである。

 本書は、こうした通史および映画人烈伝、そして50の映画館ルポ、マップ、写真で構成される。編集の過程で舌を巻いたのが、著者による写真の特定作業である。写り込んだ映画ポスターなどを拡大して分析し、撮影時期や場所などを明らかにしていくさまは、「映画館探偵」と呼びたくなるほど。資料的な価値も高い1冊に仕上がった。

 白眉は、「沖縄において戦後復興を牽引(けんいん)してきたのは映画館である」と強調したところ。「アーニーパイル国際劇場」から国際通りが、「沖映劇場」から沖映通りの名称が生まれたように、映画館がつくられて人々が集まり、街が誕生し、沖縄は復興の歩みを進めてきたのだ。

 街の変遷から見る戦後史は、熱気とドラマに満ちている。収録された映画館のほとんどが残念ながら現存しないが、人々が語り継ぎ、文章や写真によって記録されること。その重要性もまた、本書が訴えたいことのひとつだろう。スクリーンの前にいた数多くのウチナーンチュが、そのまま歴史の一ページだと感じさせる書だ。ちなみに冒頭のフレーズは、それぞれ国映館、グランドオリオン、石川琉映館。(喜納えりか・ボーダーインク編集者)