2017年(平成29年) 7月22日

タイムス×クロス 木村草太の憲法の新手

木村草太の憲法の新手(49)「ニュース女子」問題を考える 論点を多角的に解明せず

木村 草太
木村 草太(きむら そうた)
憲法学者/首都大学東京教授  

 1980年横浜市生まれ。2003年東京大学法学部卒業し、同年から同大学法学政治学研究科助手。2006年首都大学東京准教授、16年から教授。法科大学院の講義をまとめた「憲法の急所」(羽鳥書店)は「東京大学生協で最も売れている本」「全法科大学院生必読書」と話題となった。主な著書に「憲法の創造力」(NHK出版新書)「テレビが伝えない憲法の話」(PHP新書)「未完の憲法」(奥平康弘氏と共著、潮出版社)など。
ブログは「木村草太の力戦憲法」http://blog.goo.ne.jp/kimkimlr
ツイッターは@SotaKimura

 1月2日、東京メトロポリタンテレビジョンは、『ニュース女子』という番組で、沖縄の基地建設反対運動について放送し、①二見杉田トンネルの先は高江ヘリパット反対派の過激デモのせいで、取材ができないほど危険だ、②普天間基地周辺の反対派は2万円の日当をもらっている可能性がある、③高江では反対派の妨害で救急車の交通が阻止された、などと指摘した。この放送内容に批判が殺到すると、番組制作会社のDHCシアターは20日、反論文書を公表した。

 放送法4条は、放送事業者に対し、「事実をまげない」こと、「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」など、番組編集基準の順守を義務付けている。今回の番組は、これらの基準に適合していたか。

 まず、①について、制作会社の反論文書には、過激行動の証言は番組で使用できないと判断した旨の記述がある。それならば、トンネルの先は危険だなどと指摘するのはおかしい。「諸事情で取材を断念した」などの表現に止めるべきだったろう。

 また、②は謎の茶封筒を根拠とするが、それだけで高額日当の証拠とするのは無理がある。この点、反論文書は、「『可能性を指摘する』ものとし『2万円の日当』を断定するものではない」から、「表現上問題」はないという。しかし、可能性の指摘は、その事実の存在を印象付ける。十分な根拠がないなら、報道は控えるべきだろう。

 さらに、③については、各種メディアの取材を受けた現地消防本部が、事実を否定したようだ。

 こうしてみると、今回の放送内容では、どう考えても、「事実をまげない」との基準が順守されたとは言い難い。

 また、番組は、反対運動の関係者や、沖縄県外から市民特派員を派遣した団体に取材しておらず、彼らの主張・言い分を放送することもなかった。この点、制作会社は反論文で、「法治国家である日本において」「数々の犯罪や不法行為を行っている集団を内包し、容認している基地反対派の言い分を聞く必要はない」と開き直る。

 しかし、そもそも犯罪者を内包・容認しているかどうかは、言い分を聞かないと判断できない。また、たとえ犯罪者でも、不正確な情報で名誉を毀損(きそん)してはならない。基地反対運動を批判する報道をするにしても、彼らが基地に反対する理由を紹介しなければ、多角的に論点を解明したとは言えないだろう。

 さらに、番組では、外国人による反対運動支援を批判するコメントがなされた。これについて、制作会社の反論文書は、「マクリーン事件の最高裁判決」を引用し「外国人の政治活動の自由は全てが保障されているわけではなく例外がある」と述べる。しかし、マクリーン判決では、外国人にもベトナム戦争反対デモに参加する憲法上の権利があるとしており、素直に考えれば、外国人にも基地反対運動に参加する権利が保障されるはずだ。反論文書の判例の引用は、不適切だ。

 放送法4条の番組編集基準は、公権力の強制に依らず、各放送事業者が自発的に順守すべきものだ。今後の自浄作用に期待したい。(首都大学東京教授、憲法学者)

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