2017年(平成29年) 11月24日

社説

社説[マティス長官来日]基地強化は許されない

 トランプ米大統領の安全保障政策に対する日本側の懸念を払拭(ふっしょく)するためマティス米国防長官が来日、安倍晋三首相や稲田朋美防衛相と相次いで会談した。

 米軍普天間飛行場の辺野古移設についてマティス氏は、安倍首相との会談でこう語ったという。「プランは二つしかない。一つは辺野古、二つ目も辺野古だ」

 新基地建設の中止を要請するため翁長雄志知事が訪米している最中に、知事の要請行動は無意味だと言わんばかりの、県民感情を逆なでする発言が飛び出したのである。

 会談相手の安倍首相にこのような表現を用いるのは不自然だ。メディア発表用の、つまりは日本国民向けの、イメージ操作を意識した発言と見るべきだろう。

 米国の政府関係者や議員の間では「辺野古問題は終わった」との空気が広がっているという。

 昨年来、多発している米軍機の事故やオスプレイの旋回飛行に伴う騒音などの各種被害は、沖縄の基地被害が世界的に見ても例のない「複合過重負担」であることを示している。

 県内移設を前提とした米軍再編計画を推進するだけでは、負担軽減としてはまったく不十分だ。

 知事の要請行動は日米の壁に阻まれ、目に見える成果を上げることができなかったが、責めるべきは知事ではなく、軍事上・防衛上の理由を優先して「複合過重負担」の現実を放置してきた日米両政府である。

■    ■

 マティス氏は尖閣諸島について、米国による対日防衛義務を定めた安保条約第5条の適用対象とする立場を明らかにし、政府を安堵(あんど)させた。

 今回は日本政府の懸念払拭のための訪日で、今後、米国からさまざまな要求が突きつけられてくるのは確実だ。

 トランプ政権が台湾寄りの姿勢を公然と示し、中国を敵対視すれば、安倍政権は米国に従わざるを得なくなるだろう。

 南シナ海で日米が対中けん制の共同行動を強化すれば、中国は対抗措置として東シナ海での軍事活動を活発化させ、日本の動きをけん制するだろう。こうして東シナ海、南シナ海はますます不安定になり、ちょっとした偶発的な衝突が、コントロールされないままエスカレートする事態を招きかねない。

 安倍政権の前のめりを食い止める政治がほとんど機能していないだけに、軍事抑止力に頼り過ぎる政策に警鐘を打ち鳴らすことが重要だ。

■    ■

 政府は6日から辺野古の海上工事に着手し、安倍首相は10日、それを土産の一つにしてトランプ氏との日米首脳会談に臨む。

 戦後72年も基地負担に苦しみ続ける自国民よりも他国軍の軍事的要請を重視し、米側の主張に付き従うことによって海兵隊を沖縄に引き留める-そのような「卑屈外交」が強くなる恐れがある。

 翁長知事が帰国後、真っ先に取り組むべきは副知事人事である。辺野古問題を含めた「複合過重負担」への取り組みを急ぐべきである。

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