警察が衛星利用測位システム(GPS)端末を車両などに装着して尾行する捜査手法を長期間にわたって取っている可能性が高くなっている。

 警察庁が2006年6月に都道府県警に出した通達で、GPS捜査について(1)取り調べの中で容疑者らに明らかにしない(2)捜査書類にも記載しない(3)容疑者逮捕を報道機関に発表する際も公にしない-ことなどを指示していたことが分かったからだ。

 徹底的な秘密主義である。約10年前の通達であり、警察の捜査手法としてすでに定着しているのかもしれない。

 GPSは人工衛星を利用して24時間、正確な位置情報をほぼ特定することができる。

 警察庁は「任意捜査」と位置付けている。運用要領では、犯罪の疑いや危険性が高く速やかな摘発が求められ、ほかの手段で追跡が困難な場合に可能と規定している。

 だがその規定に該当するかどうかを判断するのは捜査する当の警察である。

 適正な捜査なのかどうか、裁判所や弁護人らによる検証ができず、恣意(しい)的に運用される懸念が拭えない。

 捜査対象者が歯止めなく拡大し、憲法が保障するプライバシー権を大きく侵害する恐れがある。

 強制捜査ならば憲法でうたわれている令状主義にのっとり、裁判所の令状が必要となる。捜査機関の権限乱用を抑制し、人権を保護することが令状主義の目的であることを考えれば、GPS捜査を警察自ら任意捜査と決めるのは危ういと言わざるを得ない。

■    ■

 日本弁護士連合会は今月1日、GPS捜査は捜査対象者の意思に反して行われることから「強制捜査」に該当すると指摘。「令状なしの捜査は違憲だ」として、即時中止を求める意見書を警察庁に提出した。

 日弁連がいうように、本人が知らないままにGPS捜査の対象にすることは、任意ではなく、強制捜査とみるのが適切ではないだろうか。

 運用実態も極めて不透明である。収集された情報はどうしているのか。継続的、無制限に蓄積され、目的外で使用される可能性が消えない。プライバシーが侵害された場合に、情報を抹消させて権利回復を図る機会も与えられていない。

 警察だけの判断で任意のGPS捜査が認められることになれば、個人のプライバシーが根こそぎにされ、「警察監視社会」になりかねない。

■    ■

 千葉県警は昨年、全国で初めて令状を取って車にGPS端末を設置した。警察庁は「違法な証拠収集と言われないために」と話しているが、問題があることを認識しているということではないのか。

 GPS捜査の違法性を巡っては裁判所の判断が分かれている。最高裁は審理を大法廷に回付し、春にも統一判断を示す見通しだ。

 日進月歩の科学技術に法律が追いついていない現実もある。警察の恣意的な運用に歯止めをかけるルールづくりが必要だ。国会でGPS捜査の要件や実施期間などの手続きを厳格に定めた立法が不可欠だろう。