「誠心誠意、嘘(うそ)をつく」。政界の寝業師と呼ばれ、戦後の保守合同を裏で仕切った党人政治家、三木武吉氏が残した有名な言葉である

▼自身が信じる「大義」を実現するためなら、たとえ嘘であっても誠意を尽くして語れば、相手にもそれが通じてだまされてくれる。それが三木の言い分だった

▼こちらの面々の嘘には、誠心誠意さはみじんも感じられない。国会で追及が続く文部科学省による組織的な「天下り」あっせん問題のことである。次々に「嘘」が明らかになり、一連の問題には同省の歴代4人の事務次官が関与していた疑いまで浮上している

▼驚くべきは、違法行為の発覚を隠すため、想定問答まで作成していたことである。私立大学に天下りした元局長用のほか、架空の仲介役の省OB用、大学用の計3種類の「嘘の台本」を用意していたというから手が込んでいる

▼発覚した嘘には、教育のためだといった大義はなく、身内の論理だけの「省益」ありきである。天下国家を語り、「嘘」の効用を説いた泉下の老練政治家も嘆いているだろう

▼信頼を失った文科省が誠心誠意に尽くすべきは、実態解明と再発防止に向けた取り組みである。学校教育を所管する役所が「嘘は必ずばれる」ことを、子どもたちに身をもって示す反面教師の役割を果たしただけならあまりにも情けない。(稲嶺幸弘)