1月中旬、本島中部の中学校に通う男子生徒が、同級生から殴る蹴るの暴行を受け、その様子を映した動画がインターネットで広まった。

 この中学では昨年5月にも、別の男子生徒が他校の生徒から暴行を受ける問題があり、暴行動画を友人たちが持っていたことが分かっている。

 それぞれ撮影したのは現場にいた別の友だちで、動画を他の友だちが見られる形でLINE(ライン)に送信したのだという。

 仲のいい友人同士で連絡を取り合ったり、会話を楽しんだりするライングループで、暴行映像が共有されていた事実に愕然(がくぜん)とする。

 発端となった1月の事件は、その後ネット上に動画が流出し、学校や加害生徒への批判が相次いだ。

 無抵抗の生徒の顔や腹部を繰り返し殴り、引き倒したりするのは明らかに行き過ぎた暴力行為である。被害生徒に大きなけがはなかったというが、あれだけの暴行を受けた心の傷は小さくないだろう。

 一方、暴行動画を友だち同士で共有するのは「ネットいじめ」の典型だ。ネット上に流れた動画は、いったん拡散すると消去が困難なだけに深刻である。

 管轄の教育委員会は「重大ないじめ暴行事件」とし、学校に調査委員会を設け再発防止に取り組む考えを明らかにした。

 事件はどういう状況で起こったのか、継続的ないじめはなかったか、なぜラインに投稿したかなど事実関係と、学校・教委の対応を多角的に検証してもらいたい。

■    ■

 教委が調査委員会の設置を示したのは、事件の動画がネット上に拡散した後である。騒ぎになったから腰を上げたとの印象は拭えない。

 昨年5月の暴行事案が明らかになったのも、今回の事件を受けて開かれた学校の保護者説明会の席上だった。

 この事案では、被害生徒が長期間不登校になったという。

 被害者の長期欠席は、いじめ防止対策推進法が定める「重大事態」に該当する可能性がある。重大事態を把握した際、調査委員会を立ち上げなければならないが、学校や教委はその対応をとっていない。

 いじめ問題でたびたび指摘されるのは、学校や教委の隠蔽(いんぺい)体質と危機管理意識の欠如である。

 昨年の事案で有効な防止策を打ち出すことができれば、今回の事件は防げたかもしれない。

■    ■

 スマホの普及によって友だちとのやりとりにラインを使う中高生が増えている。

 本人は軽いノリで投稿したつもりでも、他人の名誉を傷つければ罪に問われることもある。さらに拡散した情報は、当事者やその家族に長期にわたって精神的苦痛を与えることになる。

 今回のいじめ動画には、殴る蹴るという様子を見て笑う複数の生徒の声も入っている。

 動画を投稿し、拡散する人たちも暴力に加担していることを自覚すべきである。