嘉手納爆音訴訟の原告の一部146人が「対外国民事裁判権法」に基づき、夜間・早朝の米軍機の飛行差し止めや損害賠償を米国に求めた「対米訴訟」で、那覇地裁沖縄支部(藤倉徹也裁判長)は訴えを却下した。米軍には裁判権免除が与えられており「法律の遵守を裁判手続きを通じて強制することが許されない」とし「裁判権を欠く」と判断した。米軍基地から派生する不法行為について、日本の司法は一切関与できないと認めたに等しく、到底納得できるものではない。

 裁判権を欠く理由について判決は、受け入れ国の同意に基づき駐留する外国の軍隊には、裁判権の免除を与える「国際慣習法」が確立していると指摘。根拠としてエジプトやドイツなどで、他国軍による不法行為に裁判権の免除を認めた事例を列挙した。

 しかし、例えばイタリアやギリシャなどでは、他国軍の不法行為について裁判権を行使した事例が存在する。それなのに裁判権を免除した事例のみ挙げ、提訴を退けるのは公平さに欠ける。「都合の良い事例だけをつまみ食いした、結論ありきの判決だ」と断じる原告弁護団の指摘はもっともだ。

 対米訴訟提起の背景には「米軍の行為には国の支配が及ばない(第三者行為論)」との理屈から、米軍機の飛行差し止めを認めてこなかった過去の判示がある。それならば、米国を相手取り飛行差し止めを請求する-という考えに基づいた提訴だった。

 ところがわずか10秒の判決の言い渡し時、被告席に米国政府の姿は無かった。

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 「外交特権を有する者」が被告となる場合、外務省を通じて裁判権免除の特権を放棄するか否かを確認し、放棄すれば裁判権が発生、放棄しなければ裁判権免除となる手続きがある。一般には外交官などが想定される手続きだが、裁判所は今回これを米国という国家に適用した。そのため米国には今回、訴状すら送られていない。

 だが、そもそも国家が「外交特権を有する者」に該当するかどうか、それ自体が重要な争点になる可能性がある。漫然と手続きをとった裁判所の姿勢は、甚だ疑問だ。

 被告不在の判決は、原告の訴えに裁判所自らが反論する事態に陥らせた。長年の爆音による深刻な健康被害の救済を求める住民の訴えを司法が門前払いする姿には、不条理を感じずにはいられない。

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 23日には本訴となる第3次嘉手納爆音訴訟の判決が言い渡される。米国に対する裁判権を認めない今判決の後、またも第三者行為論が持ち出されれば、現にある米軍基地被害について、この国の司法は何の解決策も示せないということになる。住民が米軍基地被害の救済を求める道が断たれてしまうことにもなりかねない。

 政府が基地を容認すれば司法は何もできないということであれば、日米安保の前に国民主権は存在しないに等しい。「当たり前の静かな夜を、当たり前に享受したい」という原告の主張に司法は向き合うべきだ。