経済担当のころのコラムで、外回りをしなくなった銀行員について書いた。顧客との関係性が細って、可能性ある企業や経営者を見極める“目利き力”が失われては、地域経済の成長はおぼつかない。そんな懸念を示したつもりだった

▼「一昔前の話を書いている」。当時の地銀幹部からは、ピントのずれたコラムとおおむね不評で、後味が酸っぱかったことを覚えている

▼昔話を思い出したのは最近、地域金融の役割をめぐる議論が活発になっているからである。今の金融マンの“目利き力”はあるやなしや、磨かねばなどなど、かつて耳にした言葉が再び聞かれる

▼「取引先へ足を運ぶのは担保の用事があるときだけ」。常日ごろの関係が深まっていないと指摘が相次ぐ。融資担当が融資案件の現場に行かず、グーグルアースを使いネット上で見て済ませた、とおかしくも怖い話も聞いた

▼“劣化”といわれる状況は、金融機関のせいだけではない。銀行の健全性を何よりも重視するあまり、銀行独自の思考、行動を縛ってきた面も大きい。その元締めの金融庁は、これまでの政策の偏り、当局の失敗を議論している。「ようやくか」との感慨を持つ人もいるだろう

▼地元企業の成長や価値向上、地域の経済に本当に役に立つ存在であるか-。今後、銀行の真価がより問われよう。(宮城栄作)