先般発表された5年に1度の国勢調査の数字は、沖縄ではどう報道されたのだろうか。


 おさらいすれば、日本の人口(居住外国人含む)は、2010年10月~15年10月の5年間に、戦後初めて96万人の減少に転じた。しかし日本一出生率の高い沖縄県の人口は4万1千人の増加であり、これは東京都、神奈川県、愛知県、埼玉県に次いで全国5番目の数字だった。他に人口が増加したのは福岡県、千葉県、滋賀県のみで、京阪神地域や沖縄以外の地方圏では減少傾向が今まで以上に強まった。


 以上は事実なのだが、人口増加分を年齢別に分けてみると、まったく違う状況が見えてくる。


 最近5年間の沖縄県の人口増加4万1千人のうち、15~64歳人口(いわゆる生産年齢人口)の増加は何人程度だったか? 1%程度いる年齢未回答者も、年齢回答者の年齢別構成比に応じて按分(あんぶん)して計算してみると、マイナス千人という数字が出てくる。


 戦後初めてのことだが、働いて税金や年金を多く払っている可能性のある現役世代は、とうとう沖縄でも、内地に20年遅れて減り始めたのだ。代わりに増えたのが、65歳以上の高齢者4万人と、14歳以下の子供2千人だった。


 なぜそうなるのか。最近5年間に県内で15歳を超えた若者は8万5千人いたのだが、他方で65歳を超えた人も8万2千人にのぼった。さらに15~64歳の県外への転出入がマイナス4千人だったので、生産年齢人口は差し引き千人の減少となったのである。


 学校に例えれば「新入生8万5千人、出て行った転校生4千人、卒業生が8万2千人で、全校生徒は千人減った」わけだ。


 生産年齢人口の減少は今後ぐんぐん加速するので、基地跡地に続々と住宅やモールを建て、自家用車利用を前提にバス網をズタズタにしてきたこれまでのやり方は、早晩通用しなくなる。


 ちなみに団塊世代の4人に1人が住む首都圏1都3県の高齢化も深刻だ。彼らが65歳を超えたことで、この5年間に首都圏の高齢者は133万人増加し、生産年齢人口は75万人減少した。


 同じく学校に例えると「15歳を超えた新入生が152万人、地方から首都圏に転入してきた転校生が42万人いたのだが、65歳を超えた卒業生が269万人もいたので、全校生徒は75万人減った」ということだ。


 13年の総務省調査の速報値では、全国に819万軒あった空き家・空き室の4軒に1軒、204万軒が首都圏1都3県に集中していたが、驚くに当たらない。


 対策を示さずに問題だけ示すと嫌われる。だが、がんへの対処が、まずはがんを自覚しなくては始まらないように、人口成熟問題の深刻さの自覚なくして対処も何もない。これまでも拙著「デフレの正体」や「里山資本主義」「和の国富論」などに書いてきたが、できることはたくさんある。


 問題は、正確な事実認識がいつまでたっても広まらないために、正しい対処行動も起きないということなのだ。


 この理不尽への怒りを筆者と共有してくださる人は、どうか声を上げて事実認識を広めてほしい。(日本総研主席研究員、地域エコノミスト)

(2016年12月4日付沖縄タイムス総合面から転載)


 

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