北朝鮮が弾道ミサイルを発射した。安倍晋三首相とトランプ米大統領が共同声明を発表し、「日米両国は、北朝鮮に対し、核および弾道ミサイル計画を放棄し、さらなる挑発行動をしないよう強く求める」とけん制したその直後の出来事である。

 北朝鮮の朝鮮中央通信は13日、金正恩朝鮮労働党委員長立ち会いの下で12日朝、新型中長距離弾道ミサイル「北極星2」の発射実験を行い成功した、と報じた。

 約500キロ飛行し、日本海に落下したという。

 発射準備が最終段階にあるとしていた大陸間弾道ミサイル(ICBM)ではなく、中距離弾道ミサイルだった点に注目したい。「挑発」しつつ「抑制」する、という意図が感じられるのである。

 オバマ政権は北朝鮮に対し、「戦略的忍耐」政策を取ってきた。トランプ氏はオバマ氏の主要な成果を矢継ぎ早に廃止・変更・転換している。日米首脳会談に合わせて発射された弾道ミサイルは、米国の政策転換を促す北朝鮮からのシグナルといえそうだ。

 ここから読み取れるのは、トランプ氏に対する北朝鮮の期待感である。

 安倍首相とトランプ氏は、フロリダ州の大統領別荘で急きょ記者会見し、「断じて容認できない」(安倍首相)と北朝鮮を非難した。

 だが、トランプ氏は「米国は日本を100%支持する」と、拍子抜けするほど短いコメントを十数秒、述べただけ。北朝鮮を名指しで非難するようなことはなかった。

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 一体、何があったのだろうか。トランプ政権の北朝鮮政策はまだはっきりしない。突発事に対応するだけの準備が整っていなかったのかもしれない。もう一つ考えられるのは、名指しで批判するのをあえて避けた、との見方だ。

 どっちにせよ北朝鮮は、トランプ氏の今回の反応から「対話の可能性」を感じ取ったのではないか。

 トランプ氏は安倍首相との首脳会談の直前に、中国の習近平国家主席と電話会談し、「一つの中国」原則を尊重することを明らかにし、中国を安堵(あんど)させている。

 ミサイル発射や中国に対する対応から感じ取れるのは、トランプ氏のしたたかさである。

 オバマ政権の「戦略的忍耐」政策の下で、北朝鮮の核・ミサイル開発は後戻りが困難なほど進んだ。「制裁」を強化するだけでは、この状況を打開することはできない。「制裁」と「交渉」の両面からのアプローチが必要だ。

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 トランプ外交はどこに向かって船をこぎ出すのか、待ち受ける荒波にどう対処していくのか。すべては未知数である。経験のない外交面ではトランプ氏自身、安全運転を心がけているようにも見える。

 そのような中で際立って見えるのが安倍首相の対応だ。トランプ氏を持ち上げ褒めちぎり、蜜月関係を演出するのは安倍外交の手法ともいえるが、米国に付き従うだけの外交はもう通用しない。

 選択肢を持ち、協調しつつ、自主性・自立性を発揮していくことが必要だ。