結婚した後も旧姓のまま仕事を続けることができる自治体が、県内では県と那覇市など18市町村にとどまっていることが分かった。女性活躍の旗を振る政府は旧姓使用の拡大を推し進めるが、手本となるべき自治体の感度は鈍い。

 糸数慶子参院議員事務所が昨年11月から12月にかけて実施した調査で明らかになった。

 それによると旧姓を通称として使用することを認めているのは10市3町5村で、全市町村の半分に届いていない。教育委員会で旧姓を使い続けることができるのは県と10市3町2村だった。伝統的家族観が根強い町村部で取り組みの遅れが目立つ。

 一昨年、最高裁は夫婦別姓を認めない民法規定を「合憲」とした上で、「改姓の不利益は、旧姓の通称使用が広まれば緩和される」とした。

 しかし実態はどうだ。

 調査で旧姓使用を「認めていない」「その他」とした市町村の多くが「職員から要望がない」と答えている。「自治体のためそぐわない」「議論したことがない」という消極的な意見もあった。

 もちろん配偶者と同じ姓を名乗ることを望む女性もいるが、名字が変わることに抵抗を感じる人も少なくない。

 要望がないというより、先例がないため言い出しにくかったり、戸籍名が求められる社会保険などとの使い分けを嫌ってためらっているのではないか。自治体のためとの言い方も、既に国家公務員が職員録や人事異動通知書などで旧姓使用が可能なことから首をひねる。

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 女性たちが旧姓使用を求めるのは、結婚までに築いたキャリアが分断されるなどの不利益があるからだ。慣れ親しんだ名前が変わることは「自分が自分でなくなる」という自己喪失感にもつながる。

 晩婚化で旧姓の期間が長くなったことも不利益に拍車をかける。実際、郵便物が届かない、電話が取り次がれないなどの話はよく聞く。

 内閣府の昨年夏の調査で、働く際に旧姓を使用したいと答えた人が31%に上った。18~29歳までの若い世代に限れば4割を超えている。

 労務行政研究所による上場企業を中心とした調査では、旧姓を認める割合が2013年時点で65%に広がっている。

 通称使用を望む声は性同一性障がいなど性的マイノリティーの人たちからも寄せられている。

 県内自治体の遅れた対応は、社会の大きな流れへの理解を欠く。 

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 政府は昨年、「女性活躍加速のための重点方針」に旧姓使用の拡大を盛り込んだ。

 住民基本台帳やマイナンバーカードに旧姓を併記できるようにするほか、国家公務員の旧姓使用の範囲の拡大などを検討している。

 最高裁の一昨年の判決は、選択的夫婦別姓導入の是非について「国会で論ぜられるべきだ」とボールを返すものだった。 

 旧姓が使える場や範囲を一つ一つ広げていく取り組みを通して、選択的夫婦別姓の国会議論を促したい。