沖縄県名護市の東海岸にある大浦湾を知ってますか? 湾の奥まで深い海が迫り、海の底にサンゴ礁や泥、砂などさまざまな地質が連なる独特の環境があります。この海から全国でも他に例がないほど多くの種類の生き物が見つかり、研究者を驚かせています。米軍新基地建設工事が始まった辺野古の目の前の海の中には、どんな世界が広がっているのでしょうか。

海底から10メートル以上にそそり立つアオサンゴの大群落。沖縄本島内では最大級という(すなっくスナフキン提供)

高さ3~7メートルの林のようなマジリモクの群落。新基地埋め立て区域にかかる辺野古崎北東の斜面で見られた(すなっくスナフキン提供)

小型のハゼ頭部に寄生する新種の甲殻類「シンノカンザシ」。全長約5ミリ。すなっくスナフキンのメンバーが大浦湾で発見した。「シン」とはスナフキン西平伸代表の名から=(鹿児島大学・上野大輔さん提供)

海底から10メートル以上にそそり立つアオサンゴの大群落。沖縄本島内では最大級という(すなっくスナフキン提供) 高さ3~7メートルの林のようなマジリモクの群落。新基地埋め立て区域にかかる辺野古崎北東の斜面で見られた(すなっくスナフキン提供) 小型のハゼ頭部に寄生する新種の甲殻類「シンノカンザシ」。全長約5ミリ。すなっくスナフキンのメンバーが大浦湾で発見した。「シン」とはスナフキン西平伸代表の名から=(鹿児島大学・上野大輔さん提供)

◆大浦湾の写真を集めた「辺野古2014 HENOKO PHOTO REPORT~海中編」はこちら

■世界有数規模の青サンゴの大群落

 大浦湾の海中の様子を写真や動画で記録する活動に15年前から取り組んでいる「ダイビングチームすなっくスナフキン」(西平伸代表)というグループがあります。海の生き物を研究する琉球大学の小渕正美さんは、このチームのメンバーとして大浦湾の生き物を調べています。小渕さんは「大浦湾には県内でも独特の環境があり、そこに多様な生き物がすんでいます」と説明します。

 大浦湾の入り口には、大きなサンゴ礁が発達しています。世界有数の規模といわれる青サンゴの大群落もあります。そのすぐそばに水深60メートルに達する深場があり、湾の奥まで比較的深い場所が続いています。サンゴ礁に囲まれた浅瀬が多い沖縄の海岸の中で、独特の地形です。

 周りに深いやんばるの森が残り、いくつもの川が流れ込んで、河口にマングローブと干潟が発達しています。浅瀬にはジュゴンがエサにする「ジャングサ」などが生える海草藻場、沖には泥場、砂地などと、海の底の姿も多様で、それぞれすむ生き物も違います。

 小渕さんは「こうした多様な地形、地質が複雑に連なっているのが大浦湾の特徴です。こうした貴重な海に、研究者も驚くほどたくさんの種類の生き物がすんでいます」と話します。

■日本の魚類の4分の1にあたる1040種

 辺野古新基地建設のための環境影響評価の調査報告によると、大浦湾で5334種の生き物が見つかりました。これは、国立公園に指定された慶良間諸島で見つかった2600種よりも多く、研究者も驚くほどといいます。まだ名前がない「新種」(未記載種)も多く、年に数種が今も見つかっているそうです。魚類は、北海道から沖縄まで日本の海に約4千種がいるとされていますが、何とその4分の1にあたる1040種が大浦湾で見つかっているのです。

■子どものころから親しんできた

 「すなっくスナフキン」代表の西平さんは大浦湾沿岸の瀬嵩で生まれ育ち、子どものころから大浦湾に親しんできましたが、約20年前にエコツアーのガイドの仕事に携わった際、海の中の様子を初めて見てその貴重さを実感したそうです。「目の前の海の中にどんなに貴重なものがあるか、潜ってみないと案外分からない。写真やビデオならダイビングをしない人にも伝えられるかも―と記録する活動を始めた」と言います。

 関心を持つ仲間と一緒にグループで活動するようになり、物語「ムーミン」に登場するスナフキンが村の外を旅して見てきたことを伝えるように、大浦湾の中で見たことをお酒でも飲みながらみんなに伝えたい―とチームの名前にしたそうです。チームでは大浦湾の魅力を写真展や講演、本で知らせる活動も行っています。

 ※ダイビングチームすなっくスナフキン編「大浦湾のいきものたち」(南方新社)を参考にしました。