2月に入って寒い日が続き、セーターを着て外出することがあった。通りを歩いているとき、ふと思った。「手芸店を見かけなくなった」

▼一昔前は、商店街に1、2軒はあった。姉も店で開かれる教室に通い、毎年、セーターを編み上げていた。いたずらで、編み目をほどくとたたかれた

▼那覇市や沖縄市で老舗手芸店「にじのいえ」を3店舗経営するオナガ総業の富山俊一代表(70)によると、復帰後に編み物ブームがあり、手芸店も全県で次々と開業した。「手編みのセーターやマフラーは本土への憧れを象徴していた。こたつと雪の3点セットだった」と振り返る

▼現在の客層は50代以上で、若い女性の姿は少ない。富山さんは「今は安くていい商品がたくさんある。手作りは余裕がある人の高級な趣味になっている」という

▼働く女性が増えた。趣味も多様化し、アウトドアで楽しむ人も多い。創業65年を迎える富山さんは「手編みをしながら、夫の帰りを待つ時代ではないでしょう」と話した。高校で教員をしている友人にも聞いた。「手編みをやっている生徒は最近、まったく見かけない」という

▼男子憧れの手編みのセーターやマフラーは遠のくばかりだ。「着てはもらえぬセーターを寒さこらえて編」むようないじらしさは、都はるみさんの歌の世界だけになりつつある。(与那原良彦)