今年は沖縄映画の当たり年かもしれない。年明けからぞくぞくと封切られている。もちろん何の先入観なしに観(み)た方がいいに決まっているのだが、本書は読むと確実に映画「島々清しゃ」が観たくなるであろう。原作本ではない。〈音楽監督兼脚本家が書いた〉、映画への夢から始まり、沖縄への愛で終わる、私的なエッセーであり、制作の記録である(巻末には出演者・安藤サクラとの対談もある)。

「沖縄、シマで音楽映画 『島々清しゃ』ができるまで」(編集室屋上・1728円)/いそだ・けんいちろう 1962年生まれ。大阪府出身。音楽プロデューサーとして芸術祭賞受賞作「トーンプレロマス55」など数多くのアルバムを制作。多くの映画で音楽監督

 著者の専門は音楽制作。沖縄との付き合いは長く、沖縄音楽への造詣も深い。映画の音楽監督としてもいくつかの作品に関わっている。例えば「ナビィの恋」。その彼が大病を患い「そうだ、遺作をつくろう」と、思い描いたシーンは、沖縄の島で鳴り響く金管楽器群。夢のシーンを撮りたいがために、著者は企画の立ち上げのみならず、初めて脚本まで書いてしまう。

 映画は監督、役者はもちろん、多くのスタッフが関わる表現である。そこには秘められた物語があり、撮影され、封切られるまでの過程そのものがドラマである。ロケ地となる慶留間島との出会い(実は僕の父の出身地の島なのだけど)、現場で実際演奏した音楽を録ることへのこだわりなど、実に細部にわたって記されている。

 音楽監督の仕事の幅の広さは、僕の想像を超えていた。作曲はもとより、選曲に編曲、楽器の手配に、演技する子どもたちへの演奏指導(初めてさわる楽器を本番でちゃんと響かせるための努力たるや!)。さらに天気に左右される島の空気感、波の音、鳥のさえずり、そしてさりげなくシーンの背後に流れる島唄の微かな響き。それら全てが映画の音楽なのだ。

 足かけ6年にわたる映画の日々で、著者は少しでも映画「島々清しゃ」に関わった人の名前を実に細やかに記している。そうか、映画制作というのは、こんなふうに人との出会いの積み重ねかもしれない。本書を読んだ後にふたたび映画を観たのだが、感動がぐっと深まった。(新城和博・ボーダーインク編集者)