入社した20年前、携帯電話は会社が一部のエース記者だけに支給する憧れの象徴だった。当然新人には縁がなく、手渡されたのはポケットベル

ポケットベル(資料写真)

▼ピーピーと電子音が鳴って会社の番号が表示される。書いた原稿の不備か、現場に向かえという指示か。急いで公衆電話を探し、恐る恐る電話した

▼今の携帯電話は、かけて呼び出し音が鳴ればつながったことが分かる。ポケベルは一方通行で、確かめようがなかった。その「利点」を生かし、飲み会中は電波が届かなかったことにする猛者もいた

▼県内のポケベル事業が月内にも終わるという。スマートフォンの時代である。記者は「24時間情報募集中」が身上。技術の進歩は助かる。いつでも会社のメールが確認できる。朝も夜も休日も…

▼フランスではことし、労働者が「オフラインになる権利」を獲得した。従業員50人以上の会社に「メールを使ってはいけない時間帯」の設定が義務付けられた。罰則はないが、賛成した国会議員は意義を強調する。「労働者は職場を出てもデジタルの鎖で犬のようにつながれている」

▼日本で導入を試みたら「お客さんもライバルもいる」と反発が出そうだ。それでも想像してみると、携帯電話をなくした時の気持ちかもしれない。大事な連絡を逃すのが心配な反面、なぜかすがすがしいというような。(阿部岳)