2017年(平成29年) 12月15日

大弦小弦

[大弦小弦]昨年末、那覇市の桜坂劇場の外まで続く行列…

 昨年末、那覇市の桜坂劇場の外まで続く行列を見て、2度断念した。第2次世界大戦中、広島市から呉市に嫁いだ主人公すずを描いたアニメ映画「この世界の片隅に」(片渕須直監督)。1月に1回、原作を読んでからもう1回見た

▼戦時下で物資が乏しくなる中、映画は料理や裁縫など、おっとりしたすずの奮闘ぶりをじっくり描く。彼女の目線は常に「生活」にあり、戦艦大和を見た感想は「(乗員2700人の)ご飯、どうやって毎日作るの?」

▼丹念な日常描写と、のん(能年玲奈)さんの素人っぽい声がすずの自然体に合い、隣にいる人のような感覚になる。それゆえ戦火が襲う場面では、思わず「逃げろ」と言いそうになった。そして1945年8月6日

▼同名の原作漫画(双葉社)の作者・こうの史代さんは「『死』の数で悲劇の重さを量らねばならぬ『戦災もの』を、どうもうまく理解できていない」とあとがきでつづる。大文字で「歴史」が語られる時、切り捨てられていく個の生を丁寧に描いた

▼すずが住む呉への空爆は45年3月に始まり、沖縄戦の泥沼化に比例して激しさを増した。それぞれの世界の片隅で、多くの「生きる喜び」が奪われた

▼普通に生きるとは何か、それを壊すものはどこにあるのか。想像を巡らせる「片隅」を一つでも多く持たなきゃと思った。ぜひ劇場へ。(磯野直)

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