苦労せずに多くの利益を得ることを「濡れ手で粟」という。ぬれた手で粟をつかむと、粟粒がたくさんつかめることからきている

▼この案件も「濡れ手で粟」なのだろうか。大阪府豊中市の国有地を大阪市の学校法人「森友学園」が4月に開校予定の小学校用地として、近隣国有地の約1割の価格で買い取った話である

▼土地は鑑定価格の9億5600万円から、地下に埋まったごみの撤去費用として見積もった8億円余りを差し引き、1億3400万円で売却された。過去に7億円前後で購入を希望した別の学校法人は「価格が低い」と国側から指摘され、断念している

▼8億円余と国が算定したごみの撤去費用を、学園側は「1億円程度」と説明していたが、その後は一転して「はっきりわからない」と口をつぐんでいるという

▼この問題が国会で取り上げられたのは、小学校の名誉校長に安倍晋三首相の妻が就いているためだ。首相は関与を否定し、「関係していれば総理も国会議員も辞める」と答弁しているが、土地代の積算根拠など不可解なことが多すぎる

▼「信なくば立たず」。安倍首相も時に口にする孔子の言葉で、社会は政治への信頼なくして成り立たないという意味だ。真相究明を怠り、疑念を残したまま幕引きすれば、首相が胸を張るこれまでの成果も水「泡」と帰す。(稲嶺幸弘)