沖縄現代史研究の第一人者が、これまでの著作とは一転して、個人史を中心に沖縄との出会いと関係を綴(つづ)る。

私の沖縄現代史 岩波書店・1058円

 著者の出身地は東京。ヤマトで生まれ育った「沖縄人二世」の僕と出自が似ているだけに、自分の過去と何度も重ね合わせながら熟読させてもらった。

 回顧されているのは疎開先の熊本で敗戦を迎えた少年時代から、都庁勤務の傍ら中野好夫氏が設立した沖縄資料センター研究員として働き、復帰直後の沖縄に移り住むまでの氏の青年時代。副題が示すようにそれは沖縄の米軍支配時代とそのまま重なっている。

 氏が初めて沖縄を意識するのは高校に入学してまもない1952年4月28日。対日平和条約が発効されたこの日、全校の生徒が校庭に集められ、万歳を三唱させられた。周知の通り沖縄が日本から切り離された日である。

 この出来事を境に、「愛国少年」だった氏は沖縄を強烈に意識し続ける青年に成長していく。本土生まれの沖縄人にとって、沖縄を蹂躙(じゅうりん)し続ける日本という国はいわば植民地本国である。そんな場所で沖縄を意識すればするほど「本土」は居心地の悪い場所となる。

 私事ながら僕自身が沖縄に移住したのもそれが原因だったし、氏も沖縄で生きることを「当然の将来像として描いていた」という。が、米軍統治下のもとではそれも叶(かな)わず、氏は沖縄の外から沖縄に関わり、復帰運動の内実を問いながら活発な表現活動を展開していく。その一方で、つきまとうヤマトという安全地帯で大言壮語している自分の後ろめたさ。しかしやがてそれは複眼的な視線で、全体を俯瞰(ふかん)できる言論活動の立ち位置を見出(みいだ)す契機となる。

 そんな渦中で著者は今に知られる多くの思想家や活動家と交流の場を得ていく。69年、当時の前原高校で佐藤首相訪米阻止を叫んでハンストに突入したリーダー、山城博治氏(現・沖縄平和運動センター議長)もその一人。こうした人物たちとの出会いのシーンも本書の醍醐味(だいごみ)である。激動の時代を激烈に生きた著者の青春譚(たん)が縦横に紡がれた本書は、日本と沖縄の二つの戦後が併走して読める貴重な同時代史である。(仲村清司・作家、沖縄大客員教授)

 【あらさき・もりてる】 1936年東京生まれ。61年東大卒。都庁勤務の傍ら「沖縄資料センター」の活動に従事。74年沖縄大に赴任。学長・理事長を経て、現在沖大名誉教授。「沖縄現代史新版」、シリーズ「沖縄同時代史」など著書多数