本書を読んでいると、お年寄りの方々から聞いた話の数々を思いだす。「戦場ぬ哀り/いくさばぬあわり」「童名/わらびなー」「豚舎/うゎーふーる」「荼毘/らび」等と題された45編の詩の中には、当時を生きた方々共通の風習や戦争を経験した記憶が詰め込まれている。さらに、その情景は豊かなシマクトゥバで紡がれている。私は一応シマクトゥバでの会話ができるが、本書で初めて知る言葉がたくさんあった。

Ryukyu企画(琉球館)・1620円

 例えば私が感動した詩「特大ぎさる芋/うすまさまぎさるんむ」の中に「化け物(たながーやー)が」という言葉がでてくる。「たながーゆん/たながーいん」という動詞には、変種が生ずる、という意味があり、その名詞形が「たながーやー」である。

 これらの詩を那覇市出身の祖母に読んで聞かせた。祖母は「くぬ芋やたながーてぃ、うっぴなーなーそーてぃ(この芋は突然変異が生まれて、こんなに大きい)というふうに使うんだよ」と、使い方を教え「私たちも石川の収容所からトラックに乗せられて芋掘りに行ったよ。島尻で掘る芋は死体から栄養吸って大きかったってよ」と、詩の内容と重なる自分の記憶を語り出した。そして「機械油天婦羅/もーびるてんぷら」「口肥てぃ/くちぇーくぇーてぃ」のような詩に大笑いしていた。

 シマクトゥバが母語である方々は、この島特有の時間を生きてきた。祖母と共に本書を鑑賞するのは、島の歴史を二人でなぞっているような感じがした。

 「挨拶(あいさつ)/うぇーさち」という詩に「『夕微(ゆーひ)涼(じゅい)ぐゎー立(たっ)ち/良(い)い肌持(はだむ)ち成(な)とーさ』…。/胆(ちむ)豊(うっ)さる挨拶(うぇーさち)ぬ数々(かじかじ)/沖縄戦(いくさ)ぬ後(あとぅ)から/聞(ち)からん成(な)てぃ/人情(にんじょー)迄(までぃ)ん/薄(うす)りてぃねーらん」(「夕方から涼しくて過ごし易くなったねえ」…。心温まる挨拶のかずかず、沖縄戦と共に聞けなくなって人情までもが薄くなってしまったものだ)とあるように、この島の文化は言葉とともに消えつつある。しかし、本書の中では島の庶民の文化と言葉が確かに生きており、過去と現在を繋(つな)いでくれている。(比嘉陽花・演劇集団比嘉座座長)

【しもじょう・つぎお】(本名玉那覇文彦) 1927年西原町生まれ。2017年1月死去。著書に「短歌で綴る沖縄戦」「唐獅子の独話」など