「沖縄病」と呼ばれる病気がある。かつて沖縄が米軍支配下にあった1960年に「発病者」がいた。東大総長の茅誠司氏が沖縄教職員会教研集会の講師として招かれた際に、沖縄のことを考え続けることを指して「沖縄病」と名付けたのが最初のようだ。沖縄大百科事典にも記載がある。

ゆい出版・1620円

 戦後沖縄の置かれた状況について、日本人としての責任を含め真剣に考えようという人たちが罹(かか)った「病」の一つであった。「沖縄病」の発病者は増え続ける。沖縄に移住し、まさに沖縄に「寄り添」った人たちが多い。私の周りにも少なからずいる。

 だが昨今は、沖縄の海・空に魅せられた「沖縄病」が多く、元々の「沖縄病」とは違ってきている。

 本書の著者は、本来の意味の沖縄のことを真剣に考える若手「沖縄病患者」の一人であり、著者が「沖縄病」に罹った経緯と今後のことを素直に書き記した。2泊3日の最初の沖縄行きで「感染」。その後、東京で限られた条件ながら「沖縄」に触れていくことになる。それは、ドラマ、音楽、新聞、沖縄料理屋、書籍を通してであった。

 遺骨収集のボランティアが決定的な「発症」とも言えようか。しばらくして著者は、7年勤めた都市銀行を退職し、沖縄に移住する。打算でも義務感でもなく、自らの生き方を模索し、沖縄と出会い、沖縄で生きることを決意してのことであった。

 著者の母方の祖父は、代議士として憲法制定に関わった。それ故に、憲法を取り巻く状況や、沖縄と憲法の問題に大きな危機感を抱いている。沖縄の現状を憂い、経済を専門とする立場から今後の課題、方向性を示している。

 本書が発刊されて15年が経(た)つが、いまだ課題は変わらない。あとがきで「いじめにけじめを」と結ぶが、「沖縄いじめ」はより深刻化している。ウチナームークとなった著者は代議士秘書として自らの「病」と闘い続けている。(松田米雄・ゆい出版編集発行人)