ハーグ条約に基づき、アメリカで暮らす娘(1)の返還を求めていた母の訴えが認められた。「迅速な返還」をうたった条約の趣旨に沿って、一日も早く母子の再会が実現することを願う。

 訴えていたのは県内に住む40代の女性。米軍人だった夫との間に生まれ、米国で夫の親族と暮らす娘の返還をフロリダ州連邦地裁に申し立てていた。

 女性は結婚後、渡米したが、妊娠中にDV被害を受けたことなどから帰国し2015年7月、県内で娘を出産。3カ月後、夫の親族の結婚式で渡米した際、娘と引き離された。

 ハーグ条約は離婚や別居など国際結婚が破綻した夫婦の一方が無断で子どもを国外に連れ去り、片方の親が会えなくなる問題に対処するための国際ルールである。

 返還を求められた国が子どもの居場所を調べ、原則としてこれまで住んでいた国に戻す義務を負う。

 フロリダ州連邦地裁はこの「居住国返還」の原則にのっとり、夫側に女児を戻すよう命じる決定をした。

 娘が直前まで暮らしていたのは県内で、一方的に連れ去られたのだから、適切な判断といえる。

 女性は「私にとって生きるか死ぬかの闘いでした」と振り返り、「1年半の時間を埋めていきたい」と心境を語った。

 突然幼子を奪われた母親の悲しみ、苦しみはいかばかりか。返還命令が出たとはいえ、引き渡しが実現するまで注意深く見守っていきたい。

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 1970年に年間5千件ほどだった日本人と外国人の国際結婚は80年代後半から急増し、2015年は約2万1千件。米軍基地が集中する沖縄は、県人女性と米兵のカップルが多く国際結婚がより身近だ。

 国際結婚の増加とともに離婚も増え、「子の連れ去り」が問題視されるようになった。

 外務省によると日本が条約に加盟した14年4月以降の2年間で、日本から海外に連れ去られた子の返還援助申請は39件、海外から日本に来た子の返還援助申請は45件。

 今回、娘の返還を勝ち取った女性は当初、条約についての知識や情報がなく苦労を重ねた。

 国際結婚の相談にのる県内のボランティア団体にも、同じような悩みを持つ女性からの問い合わせがあるという。

 国際結婚が破綻した際のリスクと在外公館など相談先をあらかじめ知っておくことが重要だ。

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 国境を越えた連れ去りは、異なる言語や文化への対応など生活環境が急変するため、子どもにとっては大きな負担である。

 両親がいがみ合う姿を見て悲しい思いをする子も多く、小さな心を傷つけないような配慮も必要だ。

 別れた方の親と子が定期的に面会する権利も大切である。

 ハーグ条約加盟からもうすぐ3年。条約がどのように運用され、子どもの利益がどう守られたのかの検証をぜひ進めてほしい。