ことしのアカデミー賞授賞式は、受賞作品の発表ミスという前代未聞のハプニングも驚きだったが、米国の行方を案ずるハリウッドの危機感が色濃く映し出された

▼「政治も芸術も目指すのは真実を明らかにすること。(候補作品は)世界中で多様性と自由が大事だと教えてくれる」。最高峰の作品賞のプレゼンターを務めたウォーレン・ベイティさんの言葉が響いた

▼トランプ大統領の排他的発言やイスラム圏からの入国禁止の大統領令などを巡っては、多くの映画人が批判や反発の声を上げている。作品を通してだけでなく、俳優個人個人のメッセージの力強さが伝わる

▼作品賞は貧しい黒人青年の成長を描いた。外国語映画賞にはイラン作品が受賞。大統領令に抗議し、授賞式を欠席したイラン人監督は「『自分と敵』の二つに分断することは、恐怖や戦争へのまやかしの正当性を生み出す」とメッセージを託した

▼メキシコ人俳優も「メキシコ人として、移民労働者として、人間として、我々を分断するどんな壁にも反対する」と表明。華やかさとは違う異例の様相は、「分断」を超える対話を促す舞台にもなった

▼アカデミーは昨年「白いオスカー」と揶揄された。ことしは一変して多様化したのは新政権誕生と関係はないものの、米国に潜む課題を浮き彫りにしたようにもみえる。(赤嶺由紀子)