憲法第25条は「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」と生存権をうたう。住まいは生存権の基盤である。

 県住宅供給公社の窓口カウンターから見えるキャビネットに「貧乏退散」と書かれたシールが貼られていたことに驚くと同時に、入居者の連帯保証人を年収200万円以上と高く設定していることにも大きな疑問を抱く。

 公社は県から県営住宅などの管理を委託され、主に低所得者向けに住宅を提供する役割を担っている。「貧乏退散」といっしょに「どん底」のシールも貼られていた。外部からの指摘を受け、公社は「不適切だった」と謝罪し、シールを剥がした。

 公社の窓口は住まいを求め、多くの低所得者層の人たちが訪れる場所だ。公社は歴代担当者から聞き取りをするなど内部調査を進めたが、いつ、誰が、どういう意図で貼ったのか不明という。シールが駄菓子の景品であることから「何げなく貼ったと推測され、意図したことはないと考えている」と話しているが、県営住宅に住む人たちはどういう思いで捉えたのだろうか。姉と母親の3人で住む男性(50)は「ぎりぎりの生活をしている自分たちに向けて言われているみたいで涙が出る」と声を上げる。反貧困ネットワーク世話人の雨宮処凛さんは「差別的な意識を感じる」と語る。

 「指摘を受けるまで誰も気付かなかった」と説明する公社との間には埋めがたい溝がある。県営住宅が暮らしを支えるセーフティーネットであることを考えれば弱者に寄り添う目線が必要だ。

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 連帯保証人の収入要件が県条例より厳しい内容になっている問題も指摘されている。県条例では「入居決定者と同程度以上の収入を有する者」としか定めていないが、県が作成し、公社が配布している「入居者募集のしおり」では「年収が200万円以上ある人」と明記している。

 入居申し込み資格は月収15万8千円以下。年収にすると189万6千円以下となるが、連帯保証人の年収を200万円以上とした根拠が明らかでない。

 県営住宅の家賃を巡っては滞納がたびたび問題になっていることも事実だ。しかし、全国で連帯保証人の年収まで明示しているのは沖縄県を含め7都府県のみで、200万円以上としているのは、沖縄県と石川県だけである。

 1人当たり県民所得が全国最下位の沖縄の人たちにとっては高いハードルである。

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 神奈川県小田原市で生活保護受給者の自立支援を担当する職員らが「保護なめんな」などとプリントしたジャンパーを着用して勤務していたことが問題になったばかりだ。福祉行政を担当する部署でありながら本来の任務に背くような姿勢は本末転倒である。

 県住宅供給公社内にも似たような空気がなかったのかどうか。公社は全職員に対し注意喚起したと言っている。人権意識を問い直すことはもちろん、職員に対して日ごろからの教育や研修を徹底する必要がある。