空港に着いた外国人に来日目的を聞いて密着取材する民放キー局の人気番組で、空手の稽古のためにやってきた団体が亡き師の故郷である沖縄を訪ね、稽古と交流を深めていく感動的な話があった。

 言うまでもなく空手は沖縄が発祥の地だ。

 今や愛好家は世界194の国と地域に1億3千万人ともいわれている。

 この小さな島の伝統文化が、日本を代表する武道として世界中に広まり、多くの人に親しまれ、影響を与えていることが誇らしい。  

 空手発祥の地を発信する拠点「沖縄空手会館」がきょう4日、豊見城市内に開館する。

 沖縄空手の新たな時代の幕開けだ。

 県空手界が待ち望んだ会館は、奉納演武などを行う赤瓦屋根の特別道場をはじめ、4面の競技コートを備えた道場、空手の資料を集めた展示室からなる。道場には約400の客席も用意され、空手の大会やイベントも開かれる予定だ。

 「沖縄で稽古したい」と海を越えてルーツを訪ねる空手家が途切れない。これまでは各道場を中心に小規模の受け入れが主流だったが、会館の完成で支援の幅はぐっと広がる。

 会館の道場で稽古することはもちろん、展示室で空手の歴史を学び、巨星たちが使用した道着や武具などを見学することも可能である。

 本場の空手道を追究する愛好家の心をつかむことができたら、「聖地オキナワ」に足を運ぶ人はもっと増えるだろう。

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 2008年に県内空手界の統一組織である「沖縄伝統空手道振興会」が発足したことが、会館建設の原動力となった。それまで分裂状態にあった主要4団体が一つにまとまったからだ。

 流派・団体は違っても空手を愛する心が大同団結を促したのである。

 会館建設の目的である沖縄伝統空手の保存・継承・発展に向け、これからも「チーム沖縄」で取り組むことを第一に考えてほしい。

 県は昨年、文化観光スポーツ部内に空手振興課を新設。「空手振興ビジョン」の策定も目指している。来年8月には第1回沖縄空手国際大会を開く予定で、20年の東京五輪に向け事前合宿の誘致も進めている。

 早くもニュージーランド代表チームが沖縄市を訪れており、会館オープンに花を添える。

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 「空手に先手なし」は大正から昭和にかけて本土に空手を広めた船越義珍の言葉である。先手非道を説く名訓は、平和の思想にもつながっている。

 沖縄に住んでいるとその価値に気付きにくいが、空手の心を学ぶことこそが、多くの愛好家が海外から発祥の地を訪れる理由である。

 世界に誇る沖縄の文化に触れることができる会館に、県民もぜひ足を運んでほしい。

 沖縄空手の発展を車の両輪として支えていくのは県と沖縄伝統空手道振興会だ。車を動かすエンジンは県民の関心である。