「共謀罪」と同じ趣旨の「組織犯罪処罰法改正案」が、米軍基地周辺で抗議行動をする人たちに適用されかねないことがわかった。改正案が対象とする277の犯罪のうち、米軍基地を保護するための刑事特別法で(1)軍用物などの損壊(2)米軍事裁判所での虚偽証言-など二つの罪が適用対象に含まれているからだ。

沖縄県名護市辺野古沖

 憲法第21条は「集会、結社及(およ)び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する」と明記。憲法の3本柱の一つ、基本的人権のうち民主社会の基盤となる権利が「言論・表現の自由」である。

 改正案は適用対象を「組織的犯罪集団」とし、2人以上のうち、少なくとも1人が資金や物品の手配、下見などの「実行準備行為」をしたときに処罰できると規定している。米軍基地に対する抗議活動が兵器や弾薬などの損壊行為に向けた下見などの準備行為とみなされる恐れがないとはいえない。組織犯罪集団かどうかを認定するのは捜査当局である。

 日本弁護士連合会が指摘するように改正案には組織的犯罪集団の定義として「常習性」や「反復継続性」の要件がない。このため、市民団体や労働組合が処罰対象となる可能性が消えないのである。

 刑特法関連だけではない。米軍基地建設に抗議する市民らがゲート前に座り込んだり、工事車両を止めたりすることなどを電話やメール、無料通信アプリLINE(ライン)などで呼び掛けた場合、積極的に異議を唱えない限り、「共謀罪」が成立したと判断される懸念がある。

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 昨年5月、沖縄防衛局から海上警備を受注している警備会社が辺野古新基地に抗議する市民の顔写真と名前が入った「監視リスト」を作成していたことが明らかになった。警備会社は米軍内にある警備会社の現地本部を通じて沖縄防衛局に伝えていた。

 米軍も抗議行動に参加する市民の顔写真や名前などの個人情報を収集し内部で共有していることが本紙の情報公開請求でわかった。現場では日米の捜査当局がビデオカメラで抗議する市民らを撮影している。いずれも個人のプライバシーや肖像権の侵害に当たる違法性が強い行為だ。

 捜査当局が「共謀罪」を適用するには日ごろから、狙い撃ちにする市民らを監視する必要がある。監視リストはもちろん、尾行したり、会話や電話、メールなどを盗聴したりする手法が使われよう。抗議する市民団体や労働組合が対象になる危険性が高い。

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 警察の捜査手法は拡大するばかりだ。通信傍受法が改正され、組織犯罪だけでなく一般刑法犯にまで電話などの傍受(盗聴)が通信事業者の立ち会いなしで可能になった。裁判所の令状があれば電気通信事業者から衛星利用測位システム(GPS)による位置情報も入手できる。

 改正案には「テロ」という表現が出てこない。政府はこれまでテロを前面に押し出し、過去3回廃案になった「共謀罪」とは違うことを印象づけようとしていた。改正案の本質はやはり「共謀罪」であることを自ら露呈した。