「あれほど重く、喜ばれたゴールはなかった」。5日にQABが放送した「神様に選ばれた試合」でサッカーJ2横浜FCの三浦知良選手(50)は、2011年3月29日に決めた東日本大震災復興チャリティー試合での1発を生涯最高のゴールに挙げた

▼本田圭佑選手ら主力がそろう日本代表対J選抜に出た三浦選手は当時44歳。ゴール後、不謹慎かと一瞬迷ったカズダンスを披露すると、避難所のテレビの前で「カズ」を知らない小学生がまねて踊ったという

▼その後岩手県を訪れ、著書「とまらない」(新潮新書)の中でこう記した。「歯を磨くのを我慢し、その水を与えようとする親がいる。僕らの『当たり前』の生活は、いかに有(あ)り難(がた)いものであることか」

▼震災から11日で6年。あの日、津波に流される街、壊れていく原発の映像を見て多くの人が「これからどう生きるか」を切実に考えた。「有り難さ」の価値もかみ締めた。今はどうか、自問せざるをえない

▼三浦選手は同書でこう呼び掛ける。「こちら側(被災地以外)の僕たち自身も変わっていかなければ」。6年前の自分と、向き合う機会にしなければと思う

▼30代でベテランと呼ばれるサッカー界で、50歳になってもピッチを走り続ける姿は有り難い。目標は被災地にささげた1発を、超えるゴールを決めることだという。(磯野直)