理学博士 井上勲さん(67)=石垣市出身

 水中に生息する微細藻類学の第一人者として、30年以上、研究に没頭する。近年、注目を集める「ミドリムシ」など、食品への活用だけでなく、将来、再生可能エネルギーとしても活用が期待される藻類は「とてつもない可能性がある資源」と強調する。

「将来は藻類工学という学問が確立されると思っている」と語る井上勲さん=茨城県、筑波大学藻類バイオマス・エネルギーシステム研究拠点

 石垣にいた少年時代は星空観察と読書に夢中だった。哲学書を通して「人間とは何か」を考えるようになった。

 「まずは生き物のことを知るべき」と、大学では理学部生物学科を専攻したが、周りには鳴き声だけで鳥の名前を当てる者や、道端に咲く草花を即座に解説する強者ぞろい。

 「勉強しないと追いつけない」と、山林に入り、植物採取で知識と観察眼を養った。当時、新しい分野だった微細藻類を研究テーマに選んだ。

 約35億年前、海中で誕生した酸素発生型光合成を行う、原核生物を起点とする藻類は、「共生による進化を繰り返しながら生物の多様化に貢献した」と解析。光合成だけでなく、捕食による栄養摂取を行う藻類の発見など、世界を驚かせる研究成果を上げた。地球環境を改変、生命誕生の礎となった藻類は「いわば生態系構築の隠れた主人公だ」とアピールする。

 一方で、藻類の光合成の過程で生み出される炭化水素などの有機物はバイオマス燃料としてガソリンなど化石燃料に代わる再生可能エネルギーとして注目を集めており、米国を筆頭に世界各国でも研究が進む。

 現在、筑波大学や福島県南相馬市に造られた研究施設では基礎研究の一環として、藻類の培養が行われている。採取・精製されたバイオ燃料は混合燃料として車の走行実験にも成功。「2030年の産業化を目指す」という段階まできている。

 培養のための肥料や光合成を促す二酸化炭素など、コスト面の課題はあるが「下水処理施設の汚水や発電所の排気を利用すれば低コストで、好循環にもつながる。あとは政策が整えば」と官民の連携強化を促す。

 講演活動や藻類の産業利用を進めるコンソーシアムの理事長を務めるなど多忙を極める。「冒険心をなくしたらだめ。なんでもやってみれば面白い」と語った。(小笠原大介東京通信員)=連載・アクロス沖縄<40>

【プロフィール】いのうえ・いさお 1950年石垣市生まれ。高校入学を機に上京。東京教育大学(現・筑波大学)理学部で微細藻類の研究に従事。同大大学院生物科学研究科修了。79年理学博士。第10回内閣府「みどりの学術賞」受賞。2015年から筑波大学名誉・特命教授。