2017年(平成29年) 11月18日

タイムス×クロス コラム

日米関係、再考の契機 同盟「不変」ではない

猿田 佐世
猿田 佐世(さるた さよ)
新外交イニシアティブ事務局長

1977年愛知県出身。早大卒。日本とニューヨーク州で弁護士。2013年からシンクタンク・新外交イニシアティブ事務局長。近著に「新しい日米外交を切り拓(ひら)く」。

 日米同盟はアジア太平洋地域における平和の礎、米軍の受け入れに感謝、辺野古基地建設は普天間閉鎖の唯一の解決策-。安倍晋三首相は日米首脳会談で、これまでのトランプ大統領のさまざまな主張を封印した。会談は従来の日米関係の継続を確認する場となった。


 トランプ氏の大統領当選から3カ月、日本政府は同氏を既存の日米関係へと引き戻すべく必死に働き掛けを続けてきた。当選直後のトランプタワーでの会談しかり、日米同盟は「不変の原則」とうたった首相の国会での施政方針演説しかりだ。


 日本政府にしてみれば、全ての政策の中心に米国を据えてきたため、既存の日米関係が変わってしまっては困るのだ。会談後の会見でも、世界が非難するイスラム圏7カ国からの入国禁止令についてすら、首相は内政問題として論評を控え、トランプ氏に配慮した。


 日本側の必死の働き掛けが成功し、会談はトランプ政権が基本的に既定路線を取ることを明らかにする機会となった。


 しかし改めてここで考えてみたい。今までの日米外交はそれほどまでに良いものであったのか。


 私はトランプ氏によるこれまでの発言の多くには賛成しないが、そのことと今までの日米外交がベストの状態にあったかどうかは別問題だ。


 基地に苦しむ沖縄の問題や、日本と中韓との関係が不安定な状況にあることを例に挙げるだけでも、これまでの「米国一辺倒」の日本の外交政策が多くの問題を抱えていることは明白だ。日本政府はトランプ氏を振り向かせようと懸命なだけで、こうした問題をこの機に解決しようとする姿勢が全く見られない。


 この3カ月で、日本が将来向かう方向がより明らかになってきた。トランプ政権は今後、日本に軍事的貢献の拡大を求めてくるだろう。その米国からの追い風を受けて、日本政府がさらなる防衛力強化にかじを切ることが強く予想される。


 日本の保守派の間には、米国との同盟を「深化」させながら、オーストラリア、インド、東南アジア諸国との関係を軍事的にも強化すべきだとする議論もある。


 だが、他国と共に軍事力による中国包囲網を形成し、さらなる対立構造をつくり出すことがアジア太平洋地域の平和と安定につながるだろうか。米国との関係を深化させるというが、今なおトランプ大統領には予測不可能性がつきまとう。


 トランプ政権の登場は、日本が「対米従属」だけを判断指針にすることができなくなり、自ら外交安保について考えなければならなくなった戦後初めての機会でもある。


 外交は国際情勢を踏まえて変化するものだ。「不変の原則」などと言って、現在の日米関係が永続的なものであるかのような思考停止状態に陥るべきではない。トランプ政権誕生という「激震」を、米国との関係を客観的に振り返り、絶対視してきた関係を相対化する機会とすべきである。


 これまで日米関係に懸念を示してきたリベラル派からも、今後の日米外交と安全保障のあるべき姿を巡り提案がもっとなされるべきだ。真に日本のためになる政策とはどのようなものか、国を挙げて議論を行うきっかけにしなければならない。(2017年2月12日付沖縄タイムス国際面から転載)

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