東日本大震災による東京電力福島第1原発の事故から11日で6年になる。

 除染作業や交通インフラの整備、商店街の再建など環境整備が進み、この春には、福島県4町村に対する避難指示が一斉に解除される。

 地元自治体や住民は事故発生以来、絶え間なく難題にぶつかり、悪戦苦闘しながら、復興に取り組んできた。その努力が少しずつ実を結びつつあるが、その一方で、今なお多くの困難に直面している事実も見逃せない。

 避難指示が解除されても避難者が戻らないというケースが目立つ。すでに避難指示が解除された区域であっても、実際に戻ってきた住民の割合(帰還率)は低く、数%から10%台にとどまる。国の帰還政策は行き詰まっている。

 復興庁などが実施した住民意向調査によると、今春、一部の避難指示が解除される浪江町、富岡町では5割以上が「戻らない」と回答した。特に30代以下は帰郷を断念した人が7割前後に上る。

 「原発の安全性への不安」や「子どもたちの学校のこと」「生活に必要な商業施設や医療機関が少ないこと」などが理由だ。

 避難指示の解除に対して「早すぎる」と考えている県民も多く、評価は割れている。

 被災者が10人いれば10の被災体験があり、それぞれが異なる事情を抱え、戻るか避難先にとどまるか、真剣に悩んでいるのである。

 懸念されるのは帰還政策が進まないのを被災者のせいにする空気が存在することだ。

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 福島県の内堀雅雄知事は、

被災地の自治体や住民は「風評と風化という二つの逆風」にさらされている、と指摘する。

 福島県産に対する風評被害はひところに比べ減ったようだが、なくなったわけではない。避難者に対する偏見や差別、子どもたちに対するいじめは深刻だ。

 福島県から横浜市に自主避難した中学生がいじめを受けていたことが昨年11月にあきらかになったのをきっかけに、同様のいじめが各地で次々に表面化した。

 原発事故でふるさとに住めなくなり、避難した先でまた、いわれのない差別やいじめに遭う。こんな理不尽なことはない。

 放射性物質と放射線に関する誤った情報がインターネットなどを通して拡散され、それが健康不安をかきたて、偏見や差別意識を生み出しているのである。

 「被災者はわがまま」だという上から目線のモノ言いは、基地政策に協力しない沖縄をわがままだと批判する沖縄ヘイトとも無関係ではない。

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 避難指示の解除に伴い、賠償金も打ち切られることになる。全国各地に自主避難している世帯への住宅の無償提供も3月末で打ち切られる。これでいいのだろうか。

 廃炉までの道のりはあまりにも長い。中間貯蔵施設がないため避難指示の解除後も除染で出た廃棄物入りの黒い袋があちこちに山積みされたままである。現実を直視した、避難者に対する息の長い支援が必要だ。